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海賊放送
(Pirate radio)とは、正式な放送免許を持たず放送ラジオが多い)を行うものである。

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概要

この場合の「海賊」の意味は、「海賊版」と同義の「正規の流通ルートを経ない」「法律を無視するもの」と考えてよいが、船に送信機アンテナを積んで出航し、どこの政府の規制も受けない公海上から放送を行う、という文字通りの形式が「海賊放送」と呼ばれた歴史上最初の事例であり、また多く見られる。

取り締まりを行う側の当局は、海賊放送局の放送に対しジャミングを行うことがある。

なお、正規免許を受けた無線局が既に存在する帯域に、より強い電波で強引に割り込む行為については電波ジャックを参照されたい。

国際法上の立場

公海上からの海賊放送について、海洋法に関する国際連合条約(国連海洋法条約)は、「すべての国は、公海からの許可を得ていない放送の防止に協力する」と定めており(第109条1)、旗国以外の国も海上警察権を行使できる。

船舶の旗国・施設の登録国・従事している者が国民である国・放送を受信することができる国・許可を得ている無線通信が妨害される国は、従事している者を逮捕し、船舶を拿捕し、放送機器を押収し、訴追することができる(第109条3・4)。また当該国の軍艦・軍用航空機、又は政府の公務に使用されている船舶・航空機(沿岸警備隊巡視船)は、疑うに足りる十分な根拠があり、自国に第109条に基づく管轄権がある場合には、対象船舶の旗国にかかわらず、臨検することができる(第110条)。故に海賊局は、どこの国にも使用されていない周波数を、取締り回避のために使用する。

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歴史

かつてのヨーロッパでは、国営放送しか放送免許が認可されない、という国家が多かった。そのため市民の中には不満がたまり、アメリカ式の音楽番組やアメリカで流行するロックやポップスなどの曲を聴きたい欲求が高まった。

1960年から14年の間、北海上からオランダに向けて放送を続けたラジオ・ベロニカ(Radio Veronica)が最初の海賊放送局である

1960年代には、同様の送信形式による海賊局が盛んになり、北海の海上には沿岸諸国に向けて放送を行う船舶が多数投錨していた。有名なものに、1964年から1967年にかけて放送を続けたラジオ・ロンドン(Radio London)、1964年から北海で放送を続けるラジオ・キャロライン(Radio Caroline, ])がある。

これらに対して政府は取り締まりを行ったが、いたちごっこで効果は上がらなかった。結果、現在でも多数存在する。運営費を稼ぐために広告を受けてコマーシャルを流す、事実上の民間放送となっている局も多い。

また、フランスなどでは、海賊局を法管理下に置き、国内で送信するための免許も与え、合法化した。これらの局は今では定義に当てはまらないが、昔の名残で今でも「海賊放送」と呼ばれることがある。イギリスでも、BBC1967年にポップミュージック専門局「BBCラジオ1」を始める際、ジョン・ピールら海賊放送局の人気DJを多数起用した。

イギリス軍が第二次世界大戦中に本土上空防衛のため北海沿岸に建設した海上要塞群(マンセル要塞英語版)は、戦後放棄され、公海上にあるという条件から、海賊放送の格好の拠点として不法占拠された。このうち、シヴァリング・サンズ(Shivering Sands / U7)はミュージシャンのスクリーミング・ロード・サッチらにより占拠され、1960年代半ばの数年間、海賊放送の拠点となった。フォート・ラフス(Fort Roughs / U1)を占拠したパディ・ロイ・ベーツは、のちに同地で「シーランド公国」の建国を宣言した。

アイルランドの事例については、アイルランドの海賊放送を参照。

崩壊前のソビエト連邦では、テレビの海賊放送局が存在していた。ホームビデオがほとんど個人に普及していなかった(COCOMなどによる東側諸国への輸出規制のため、非正規ルートを通じて高額で購入するしかなかった)こともあり、ほとんど映像は現存していないが、旧ソ連時代を知るロシアのインターネットユーザーによってしばしば話題に上ることがあるという[2][3][4]。彼らの回想によると、1970年代から80年代末までの旧ソ連では国営放送以外の放送局が存在しなかったために、こうした非合法の海賊放送は国民の間でも潜在需要が高かったという。海賊放送局は独自の放送設備を有しており、その出力はソ連空軍機の空中無線中継システムよりも強力であった。そのため、海賊放送局は所在地を知られるリスクを抱えており、また共産党の報告書にも、防衛上の重大な問題としてしばしば取り上げられていたという。


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日本

電波法に定められた電界強度以下であれば微弱無線局として免許は不要であるが、一部にはこれを超過して送信する局があり、不法無線局として摘発される。事例としては、次のものがある。なお「局名」は全て自称。


FM西東京(エフエムにしとうきょう)は、1978年から1979年にかけて日本東京都八王子市から送信されていた、主にポピュラー音楽を流す超短波(VHF)帯・周波数変調(FM)方式の海賊ラジオ放送(違法放送)である。無免許で高出力送信していたため、電波法違反の不法無線局として当局に摘発され閉鎖した


開設経緯

この「放送」は八王子市在住の大学生、KとFの2人が1978年(昭和53年)9月頃より、2人が住んでいた八王子市市中野上町アパート(鉄骨3階建ての賃貸アパート)で出力1W程度の無線機で開始したものであった。KとFは1977年(昭和52年)に都内の大学に通いはじめた学生で、部屋が隣同士でともに音楽が趣味であったことから親しくなり、レコードを貸し借りするようになった。

レコードの持ち運びが手間となり、大学の先輩が卒論で製作した無線機をKが持ち込み、2人の部屋の間で「放送」を行うようになった。この「放送」は同じアパートに住む30人の学生や近隣の住人にも聴かれ、リクエストはがきが届くなど思わぬ反響を生んだ

高出力化と反響の広がり

熱が入った2人は1978年(昭和53年)11月中旬に東京・秋葉原で部品を買い集め[2]、出力20Wの高出力送信機を自作して「FM西東京」「JONT-FM」を自称、週平均3回、午後11時から午前2時までの本格的な定期的「放送」を開始し、KがDJを、Fがレコードカセットテープなどの音源を再生するミキサーを担当[3]キャンディーズビートルズABBAなどの曲を流していた

八王子郵便局に「八王子放送研究会」の名義で私書箱を開設し、リクエストはがきを受け付けていた

この年の末頃から「放送」の存在は東京多摩地域をはじめ、神奈川県西北部の中学生・高校生の間で話題となり広まっていった。摘発によって活動が終了する1979年(昭和54年)2月までの間に私書箱に届いたはがきは600通ほどで、バレンタインデーにはチョコレートまで送られてきたという。多摩地区はもとより新宿渋谷、神奈川県相模原市などからも投稿があった。

摘発・閉鎖

結局この海賊放送局は、関東電波監理局(現:関東総合通信局)や警察の知るところとなり摘発されて終了し、2人は4月10日に書類送検された書類送検の事実は大きく報道され、その後も日本における海賊放送の代表例としてしばしば言及されている


類似の事件

この後もミニFM不法無線局として摘発された事例がある。なお「局名」はすべて自称。

  • 1985年(昭和60年)9月 - 東京都港区の「KYFM」
    • 電波法違反を公言していたため行政指導にも従う見込みもないとして、関東電気通信監理局が警視庁に告発した。
  • 2011年(平成23年)7月 - 東京都日野市の「JOUT-FM百草(もぐさ)」
    • 日野市内のアパートから無免許で最大42Wの高出力で送信していた会社員の男を関東総合通信局が告発、日野警察署現行犯逮捕し身柄送検した。男は「DJすーさん」と名乗り、関東総合通信局からの2回にわたる警告を無視して「放送」を続けていた男は「JOUT-FM百草」というコールサインを用いていたが、1990年代の練馬区在住時から「JOUT-FM」と称して送信していたといわれる。
    • なお「JOUT」のコールサインNHKに指定されるもので、過去に第1放送に指定されたことはあるが、JOUT-FMとしてNHK-FMに対して指定されたことはない

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ミニFM

ミニFMとは、電波法に規定する免許を要しない無線局の内、微弱電波でFM放送周波数帯を使用して放送するもののことである。 微弱無線局であるため無線局免許状無線従事者は必要なく、放送法上の放送局でもない

コミュニティFM(CFM)との混同を避け、マイクロFMと称することもある。




概要

比較的簡単に開設できるため、児童館大学生の課外活動、学園祭運動会などの町の話題や地域のコミュニケーションの場としての実況放送、商店街町興しイベントの会場案内などに使われる。反面、時間的にも空間的に限定されたものであり、内容としては個人または同人趣味やイベント会場の構内放送の延長上にあるものがほとんどである。

広範囲をカバーしようと単に出力を大きくするならば、第二級陸上特殊無線技士以上又は第三級総合無線通信士以上の無線従事者が管理する地上基幹放送局の免許を要することとなる。なお、当時は第二級陸上無線技術士以上の無線従事者が必要だったが、平成31年政令第19号(平成31年1月30日施行)により、第二級陸上特殊無線技士以上及び第三級総合無線通信士以上にも一部の地上基幹放送局の操作が認められた(詳細は陸上特殊無線技士および総合無線通信士を参照)。

また複数の場所から送信するにしても、同一周波数を使う限り相互干渉は避けられないため不感地帯を設けざるを得ない。このような場合にはアンテナ漏洩同軸ケーブル(LCX、Leaky Coaxial cable)に置き換えて敷設する。LCXを施工できるのは、JRA競馬場でのグリーンチャンネルAM放送再送信両国国技館での大相撲中継の再送信[3]富士スピードウェイ鈴鹿サーキット住之江競艇場での実況放送など一定以上の来場者が見込める施設であり、事業的な見地からもイベント開催時でないと行っていない。

また、FM放送再送信や非常割込放送を行う道路トンネルや地下駐車場があるが、これもLCXによるのでミニFMの一種といえる。これは遮蔽された空間なので地上基幹放送局と同一周波数で再送信できる。恒久的に送信しているものは、ハイウェイラジオ上三川(北関東自動車道壬生パーキングエリアで実施)などごく一部の路側放送のFM放送波による再送信および道路トンネルなどのFM放送再送信などのわずかな例のみである。

地下街のように広範囲でノイズが大きくなると、LCXでは不十分となる。放送波遮蔽対策推進協会では、FM放送再送信を実験試験局により対処してきたが、一部が地下街の管理会社に事業承継され、この際に受信障害対策中継放送の制度による特定地上基幹放送局(通称ギャップフィラー)に種別変更された。実験試験局には第三級陸上特殊無線技士以上の無線従事者による管理を要するが、適合表示無線設備を用いたギャップフィラーにば無線従事者が不要だからである。いずれにしても無線局の免許を要するのでミニFMとはいえない。

東海道・山陽新幹線東北新幹線などの鉄道車両内でのAM放送・FM放送再送信のサービスは、車両単位のミニFMといえる。開始当初は沿線で地上基幹放送局が使用していない周波数を選定したものの、新規開局したものと周波数が一致又は近接していることがあり、受信に支障をきたすこともある。

ドライブインシアターも、初期はともかくカーラジオでFM放送が受信できるようになると映画上映の際の音響装置として使用されることとなり、これもミニFMといえる。映画興行の変化に伴い、ドライブインシアターも21世紀初頭には常設施設は皆無となり、イベントとして臨時に行うものしか見られない。

#沿革にもあるように、話題になったのはせいぜい1990年代前半までで、長引く不況から聴取者の限られるミニFMは経費削減の対象となりやすく、JRA競馬場の「グリーンウェーブ(旧称ターフサウンドステーション(TSS))」、横浜スタジアムの「FMハマスタ」、浅草花やしきあさくさFM両国国技館の「どすこいFM」などのイベント施設や、東海道・山陽新幹線のミュージックサービスなど、独自放送をしていたミニFMは廃止またはラジオ放送の再送信のみに縮小している。

一方、インターネットラジオの台頭は、かつてならミニFMを利用したであろう企業団体がこれを利用することとなり、取って代わられた形となった。エフエム・ギグソラトニワ渋谷クロスFMなどはミニFMが主体のように事業を開始したが、実態はインターネットラジオが主でミニFMは従、あるいは廃止している。個人で行うのもかつてのラジオ少年が年を重ねた中高年者などしか見当たらなくなった。送信機も容易に入手できるものは組立てを要するキットオーディオ機器アクセサリーFMトランスミッターしかない。

解説

微弱電波の定義

「微弱電波」とは、電波法第4条第1項に規定する「発射する電波が著しく微弱な無線局」によるもので、これをうけた総務省令電波法施行規則第6条第1項第1号に「無線設備から3メートルの距離において、電界強度が毎メートル500マイクロボルト以下のもの」と1986年(昭和61年)から規定されており、この距離から微弱電波に係わる技術者などは3m法と称している。 電界強度は出力のみではなくアンテナの形状や設置する高さが総合して関係するので、測定方法が総務省告示として規定されている。 この電界強度をダイポールアンテナを使った場合の送信電力に換算すると50nW[7]となる。 試験場などの設備が無ければ告示の条件による試験は困難であり「微弱無線設備性能証明」を行う企業がある。電波法令上の義務ではないが違法性が無いことを証明するにはこれを利用すればよい。

1996年(平成8年)までは規則改正の経過措置[8]として、「100mの距離において15μV/m以下」が許容されていた。 3m法と比較すると、自由空間での電波伝搬特性を基に100mでの値を3mでの値に換算した等価なものにみえるが、実際には100mの距離があると大地反射の影響を無視できず、伝搬減衰量は自由空間でのものより大きくなる。10m以上の距離で大地反射を考慮すると15μV/mの電界強度となるのは30m[7]と計算される。これは、実用感度が100μV/m程度(地上基幹放送局の放送区域の電界強度の最低限が250μV/mと定義されているのもこのため)の市販の廉価なFMラジオでの到達距離におおむね相当する。

この微弱電波を超える出力で送信すれば電波法第110条第1項違反となり総合通信局沖縄総合通信事務所を含む。従前は地方電気通信監理局、地方電波監理局、沖縄郵政管理事務所。)による取締り、刑事告発の対象となる。

周波数の選定

放送受信の妨害にならないよう、既設の地上基幹放送局およびその周辺の周波数を除いて使用周波数を決定しなければならない。 ここで一般的なFMラジオの中間周波数(IF)は10.7MHzなので、ミニFMの10.7MHz上の周波数が使用されていれば、ミニFMの10.7MHz下の周波数のイメージ周波数となり、イメージ混信となる。

2012年(平成24年)まではFM放送の直上の周波数の90-108MHzにV-low帯と呼ばれるアナログテレビジョン放送の1-3chがあったが、ミニFMの周波数をどこに設定してもテレビ放送の映像周波数と音声周波数は既設のFM放送局受信のイメージ周波数となりうるものではなかった。 しかし、2014年(平成26年)よりFM補完放送が90-94.9MHzで開始され、95MHzまでがFM放送の周波数帯と認識されるようになった。 更に2016年(平成28年)よりi-dioの愛称でマルチメディア放送が開始された。 マルチメディア放送の周波数は101.285714MHz又は105.571429MHz、占有周波数帯域幅は使用セグメント数によるが最大9セグメントで3.857143MHz(±1.978571MHz)である。 ここでミニFMの周波数を90.6MHz又は94.9MHzとすると79.9MHz又は84.2MHzを中心に最大±1.98MHzがイメージ周波数となり、これらの周波数でFM放送をしていたらイメージ混信となり受信妨害となる。つまり補完放送の周波数帯をミニFMに利用することはイメージ混信の点から推奨できない。

送信機とアンテナ

ミニFMを開設するには、送信機とアンテナが必要となる。

総務省は、微弱電波の範囲を超えるおそれがある無線機を一般市場で購入し測定を行い、この範囲を超えるものについて公表する無線設備試買テストをしている。 試買テストにより電界強度が基準を超えると公表された機器  中にはFMトランスミッターもあり、製造・販売業者は自主回収  している。 微弱無線マークELPマーク)は、この状況に対応して民間の任意制度として開始されたもので微弱無線設備と証明された機器が登録されるが、登録されたFMトランスミッターはロッドアンテナやアンテナ線などの露出したアンテナがない埋込構造のものばかりである。 これは、主に自動車の車室内での使用を想定したものであるが、安易に外部アンテナを接続できないようにして電界強度の基準を超えないようにすることでもある。 一方で露出したアンテナを持つものは、かつては家電製品メーカーが製造し販売店で容易に入手できたが、すでに製造を中止している。

このような事情から、一般人が従前のような外部端子をもつ又はアンテナが露出した送信機の完成品を入手するとしたら、ガレージキットを製造するガレージメーカーに相当するような弱小業者が自社ウェブサイトで販売するものか、国内外の通信販売サイトに出品されているものしかない。 しかし、電界強度は送信機の出力とアンテナの形状や高さが一体となって決定されるもので後述のように外部アンテナを接続すれば基準値を超えることは容易なこと、送信機の製造や販売に法規制は無いことから、基準値を超過すれば製造・販売業者ではなく使用者が責任を問われる。 このことは業務用として事業者向けに受注生産するメーカーが存在しないという意味ではなく、使用する目的や場所などの仕様を明確にすれば違法性の無い機器を製造する。

完成品以外の送信機は組立キットしかなく、電子技術の知識が無い場合は製作が難しい。 完全に自作するには、PLLシンセサイザーにより安定度が高く、高セパレーション(ステレオ送信時に左右の音が交わらない)の物が望ましい。 PLLシンセサイザーで周波数変調すると、PLLの周波数引込特性により、変調波の低域周波数成分がカットされる。PLLシンセサイザーのVCOを安定に発振させると数μW〜数mW程度の出力となるが、筐体輻射として外部に漏れるとこれだけで基準値を超えてしまうおそれがあるため、VCOをシールド構造にするか非常に小形に作らねばならない。 後段についても基準値を超えない構造を要する。 つまり、送信機製作の技術的な難しさは、いかに電波を安定に弱くし、基準値をクリアするかにある。

送信機とアンテナとの間の接続は同軸ケーブルを利用するが、一般に送信機の出力インピーダンスは50Ωのため受信用の75Ωより50Ωを用いるのがよい。 インピーダンス変換はマッチングトランス(インピーダンス整合器)または簡易的には25Ωまたはその近似値の無誘導抵抗を直列接続にする。 不整合損失を減らして許容値を超えた場合、こんどは送信出力を低下しなければならないので、インピーダンスを必要以上に気にすることは無い。

飛距離を稼ごうとして高利得のアンテナを使用するとしても、送信側にFM用八木アンテナなどの高指向性アンテナを安易に用いたら、特定方向にのみ電界強度が増大して基準値をオーバーしやすくなる。 これはサービスエリア、つまりどこまで確実に聴取できる範囲とするかに係わる問題でもあり、例えば施設の構造により、一部に不感地帯ができるのを承知の上で複数の場所にアンテナを設置する、臨時のイベントでアンテナではなくLCXを使用するなどの判断につながる。

ところで電界強度の測定方法を規定した告示では、被測定機器を高さ1.5mの台(但し、アンテナの下端が地上高0.5m未満となるときは下端を地上高0.5m)に置いて測定するもの [12] としている。 このことは、ELPマーク機器をビルの屋上や柱など高所に設置して、地上高1.5mに設置した場合より遠距離で受信できるようにしても違法性は無いと言える。

ミニFMを開設するにあたり、トンネルや駐車場または競技場や展示場などの恒久的な施設、スポーツ大会やドライブインシアターなどの行事であれば専門の施工業者やイベント業者によるが、零細な団体や個人で技術的な支援も得られないのならば、むやみに送信機の出力やアンテナを大きくするのではなく、違法性の無い機器をいかに見通しのきく場所に設置するかが重要になる。

受信設備についての法規制は無いため高利得のアンテナを使用するのが有利ではあるが、市販のFM放送用アンテナは携帯するには大きすぎ取扱いも不便なので、聴取者にラジオばかりでなくアンテナまで準備を呼びかけることは現実的ではない。 むしろ、イベントによってはラジオをレンタルすることも必要になる。

運用

電波法

免許不要であってもミニFMは無線局の一種であり、電波法第82条によりミニFMの電波が「他の無線設備の機能に継続的かつ重大な障害を与えるとき」は、その障害を除去するための措置をとることを命じられることがあり、総務省職員により検査されることもある。

また、次のようなことは電波法第9章の罰則の対象である。

  • 自己又は他人に利益をもたらしたり他人に損害を与える虚偽の事項、ニセの「SOS」(遭難信号)の発信、日本国憲法及び政府を暴力で破壊する主張、猥褻な内容を送信すること。
  • 警察無線消防無線などの重要無線通信を妨害すること。
著作権法

ミニFMであっても著作権法の対象となるため、著作物を無断で送信する事は同法の例外規定によるものを除き、違法である


沿革

NHK-FMが全県に普及し民放局が東京名古屋市大阪市福岡市に開局した1970年代にも類似の事例があったといわれるが、散発的で詳細は不明である。送信機の市販品もなく、工作少年・ラジオ少年といわれた年少者がラジオ雑誌を見て自作した送信機を用いた製作後の余技というべきものである。ただ1970年代末頃には雑誌の広告にもトランスミッター(送信機)の完成品が見られるようになった。

1979年(昭和54年)2月には、八王子市で最大20Wの出力で送信していた「FM西東京」(CFMの「エフエム西東京」とは無関係)が摘発された。

同年7月25日号の『POPEYE』には「100m放送局の面白い使い方」という記事が掲載[13] [14]されている。これが一般人の耳目をひくようなカルチャー誌に取り上げられた走りであろう。

1980年(昭和55年)には、大阪芸術大学の学生が「ミニコミFM放送サークル」と称して活動を始めた[15]

1982年(昭和57年)8月には音楽プロデューサーの上野義美港区青山キラー通りに「KIDS」を立ち上げた。これがミニFMの嚆矢(昭和57年8月5日 スポーツ報知)とされることがある。これはロックバンドC-C-Bがこの局の企画で生まれたからで、商業的な側面をとらえてのことである。

県域民放局が開局し、評論家粉川哲夫が「自由ラジオ」を提唱した1982年から1984年(昭和59年)ごろがブームであった。ラジオ雑誌のみではなく新聞テレビ等のマスメディアに取り上げられたり、書籍『ミニFM全国マップ』(亜紀書房 1986年)が発行され128局が掲載されているが、日本全国で2000局はあった[16]とも書かれている。

この中にはネットワークを組んでカセットテープに録音した放送素材を交換し合った者もいる。さらに電波を通して他の局との連携を指向した者もいて、大阪市及びその周辺ではピーク時の1990年(平成2年)頃には、番組を直接中継したり相互に交信を行える局が60局[17]、1981年(昭和56年)〜1999年(平成11年)までで延べ165局存在したという。

後のCFM、臨時災害放送局や大規模なイベントに開局するイベント放送局はこの発展形ともいえ、ミニFMに携わった者が開局した例もある。

1985年(昭和60年)9月には、東京都港区の「KYFM」が摘発された。これは電波法違反を公言したため、行政指導にも従う見込みもないと関東電気通信監理局が警視庁に告発した[19]からであるが、目に余るものに対し一罰百戒の効果をねらったといわれている。なお、KYFM摘発の報道の中には「ミニFM局は全国で300以上」と書いた新聞記事[20]もある。

1980年代後半からは主要都市での民放局複数化や1992年(平成4年)のCFM登場によるFM受信の選択肢の増加、1988年(昭和63年)の微弱電波の電界強度の測定方法の明文化[21]や、1996年の規則の経過措置満了による規制強化などにより局数は減少した。

1991年(平成3年)には、映画波の数だけ抱きしめて』が公開された。1982年の神奈川県湘南海岸を舞台にミニFMの開設をテーマとしている。

1995年(平成7年)の阪神・淡路大震災では、神戸市長田区の「FMわぃわぃ」(および前身の「FMヨボセヨ」「FMユーメン」)が、ミニFMによる多言語の生活支援放送を行い話題になった。1996年(平成8年)に「FMわいわい」はCFMとなり、2016年に廃局しインターネットラジオに移行した。西宮市FMラルースも同様な事例として知られ、1998年(平成10年)にCFMのさくらFMとなった。

2006年(平成18年)から翌2007年(平成19年)にかけて、高知工業高等専門学校四万十市でFMラジオを用いた防災情報伝達システムを実験した。川登集落に送信機を設置し、高知県防災システムのホームページから四万十川上流にある観測地点の情報をダウンロードし音声に変換して放送するというものである。半径1km程度の集落であるが、送信機1台では最大でも半径80m程度しか到達せず、特定小電力無線を中継器として利用し複数の送信機で受信範囲の拡大を図ったと報告[22]されている。

2006年にはまた、京都市のエフエム・ギグが近畿総合通信局から電波法違反を指摘され送信を停止した。その経緯が公表[23]されており貴重な事例報告である。エフエム・ギグは以降はインターネットラジオに専念している。

2011年(平成23年)7月には、日野市アパートから無免許で最大42Wの出力で送信していた会社員の男を関東総合通信局が告発し、警視庁が現行犯逮捕、身柄送検している[24]。男は関東総合通信局から二度も警告されていたがこれを無視して送信を続けていた [25]。男はまた「JOUT-FM百草」というコールサインを用いていたが、1990年代の練馬区在住時から「JOUT-FM」と称して送信していたといわれる。 なお、JOUTはNHKに指定されるコールサインとされ、第1放送に指定された事例はあるが、JOUT-FMとしてFM放送に対しては無い。これについては日本の放送局所の呼出符号を参照。

2013年(平成25年)には無線設備試買テストが、2015年(平成27年)にはELPマークの登録が開始された。これらにより#送信機とアンテナにあるように、一般人がミニFM用の機材を入手するのは従前より困難になった。

2017年(平成29年)には、アニメーション映画『きみの声をとどけたい』が公開された。舞台は『波の数だけ抱きしめて』と同じ湘南だが、時代は21世紀で、2001年から2005年にかけて定期的に放送が行われていたという設定である。

音声アシスト規格の災害用FM

2001年(平成13年)に特定小電力無線局の用途の一つとして視覚障害者の音声アシスト用に周波数75.8MHz、出力10mWが制定されたが、全く普及していない。

情報通信研究機構は、2010年(平成22年)にこの規格を基にして災害時に小学校の校区程度をサービスエリアとすることを想定した装置を開発、技術基準適合証明を取得し、到達距離を検証する[26]と発表した。実験用装置は未来技術研究所が製造し、同年中に技術基準適合証明を取得している。 2012年(平成24年)には、この装置を用いて東日本大震災復興支援のフィールド試験を実施 した。

特定小電力無線局であるので免許や資格は不要、外部アンテナも接続でき、周波数がFM放送帯の直下にあるのでPLLシンセサイザーを使わない簡易なFM受信機なら受信できる。但し、30秒以上の連続送信はできず、キャリアセンス(同一周波数の電波を受信すると送信を停止する)機能を搭載することが義務付けられているので、一つの局が送信すればそのサービスエリア内では他の局は送信できない。


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ミニAM

中波振幅変調して送信すれば、ミニAMとなる。中波をFM放送のVHFと比較すると、

  • 利点としては、直進性が弱いので建物の影にも回り込んで受信でき広範囲に届く。
  • 欠点としては、波長が非常に長いためマッチング(共振)させるためにある程度長いアンテナが必要となる。また、夜間は電離層のE層反射による遠隔地からの電波が到来し昼間より混信が増す。

という特徴がある。 送信機は、電子ブロック等の電子回路学習キットや自作回路で組み立てることができるため、1970年代の小学生の間では、電子ブロックのブーム時に使われる傾向があったが、トランジスタ発振回路に直接に変調をかけた高周波増幅を持たない回路であったため実用性は乏しかった。

ミニFMより事例は少ないが境港市水木しげるロードで期間限定で行われた「妖怪ラヂオ」[32]がこれである。この送信機は駐車場や店舗など狭小な範囲の放送装置としても利用[33]されている。 また、#概要に述べた道路トンネルや地下駐車場でAM放送再送信や割込放送を行うものもあり、八重洲地下街川崎アゼリアなどの大規模地下街、札幌ドームナゴヤドーム都営地下鉄でもAM放送を再送信している。 これらの施設内や車両内への輻射という点ではミニAMといえる。

ミニAMは中波を用いるので、トンネルなどの施設では誘導線または螺旋漏洩同軸ケーブルによることができれば、出力を大きくしても高周波利用設備とする[2]ことができる。この場合、高周波利用設備許可状を要するが無線従事者は不要[36]である。AMにおいてもこれらの施設が遮蔽されているから地上基幹放送局と同一周波数で再送信できるのであり、都営地下鉄の高架部では実施していない。

なお、路側放送は、10W(1620kHz)又は5W(1629kHz)と微弱電波より大出力で送信するため、警察又はNEXCOなどの道路管理者が特別業務の局の免許を取得し、第二級陸上特殊無線技士以上の無線従事者による管理により行うものでミニAMではない。

ミニテレビ

テレビ電波を送信すればミニテレビとなるが、機材の調達が比較的難しく、サービスエリアも狭い。

  • VHFの場合、微弱電波の送信機はビデオデッキなどから部品を取り加工するか自作するしか無い。
  • UHFの場合、微弱電波の定義が「無線設備から3メートルの距離において、電界強度が毎メートル35マイクロボルト以下のもの」となるため、サービスエリアがVHFより極めて狭くなる。また、デジタル用微弱電波送信機は後述のワンセグ用送信機を除き市販されていない。

地上基幹放送局の送信波は6MHz幅のアナログ方式では残留側波帯であるのに対し、安価なUHFトランスミッターの送信波は9.5MHz幅の両側波帯のものがあるので、放送チャンネルの隣接チャンネルを使用すると放送受信を妨害してしまう可能性がある。場合によってはスプリアス波により隣々接チャンネル以降も妨害してしまうこともあるので、事前に放送受信に影響を与えないか確認し、問題があれば対処してから送信しなければならない。なお、VHF送信機による隣接チャンネルへの影響は、UHFのものより小さい。これは、同じ6MHz幅であっても比率としてみれば周波数が低いほど相対的に離れており、テレビ受像機内部の同調回路の減衰量のより大きい帯域を通過することになるからである。

あまりにも稀有な存在でかつテレビの通常のプリセットチャンネル外で送信され、デジタル方式のテレビにとっては妨害電波となるため気がつかれない場合が多い。

ワンセグ用送信機

2007年に富士通スポットキャストと称する微弱電波を利用したワンセグ配信システムを発表した。受信可能な距離は、送信アンテナから数cm〜2m程度である。2011年に富士通は販売を終了したが、同様の機器は他社から民生用として販売されている。

エリア放送

ワンセグ配信の延長上にあるのがホワイトスペースを利用するエリア放送である。2012年4月に制度化され、地上一般放送局として免許される。地上一般放送局は適合表示無線設備を用いれば無線従事者は不要である。 エリア放送は、フルセグも可能な地上一般放送で、地上基幹放送より規制は緩やかであり、個人による免許申請も制度上は不可能ではない。

ミニFMをテーマにした映画]



電波ジャック

電波ジャック(でんぱジャック)とは、電気通信における正規の伝送路を乗っ取り、正規の受信者に向けて独自の内容を送信することをいう。

なお、「電波ジャック」はハイジャックに由来する日本独自の表現であり、英語では「Broadcast signal intrusion(放送信号割り込み)」又は、「Broadcast pirating」と呼ぶ

手法

無線通信

エラー訂正や暗号化がされていない放送(アナログ信号を使った放送など)の場合には、同一周波数電波を同一のフォーマットに準じて発射することで乗っ取りが行われる。

ラジオ放送の場合、正規の放送においても容易に混信が発生する特性を持っており、電波ジャックは比較的容易である。ラジオの放送周波数帯に対応した強力な送信機が製作・使用される。国家間でラジオ放送局を利用したプロパガンダ通信妨害の放送を互いに相手国領土内に流し合うという事例が多く見られる[1]

テレビ放送においても理論的には、テレビの放送周波数帯に対応した送信機を製作・使用するだけで近隣のテレビ受像機に音声および映像を映し出すことができる。しかし、アナログテレビ放送の電波出力は一般的に高出力であるため、本放送を妨害して音声・映像ともに完全に乗っ取るには、放送局よりさらに高出力な送信機の製作が必要となり、そうなれば発信源の特定が行われやすいことから、このような完全な電波ジャックが行われた例はまれである(音声のみを乗っ取る事例は多い)。

ただし、かつてアメリカでは、コンポジット映像信号入力(ビデオ端子)を持たない旧型テレビ向けにアンテナを通じてビデオテープレコーダの映像を映し出す簡易な送信機が販売されており、この機器に電波出力を上げる改造をほどこすだけで、近隣のテレビの映像になら悪影響を与えることができた。また、クローズドキャプションの製作機材を悪用することで、クローズドキャプションが用いられていないテレビ放送に対して、意図的に文字情報をかぶせて表示させる手法も行われた。

テレビラジオ放送のほか、防災無線の同報用スピーカーが標的にされたケースもあった(後述)。

21世紀の日本においては、地上デジタルテレビ放送の完全実施と、総務省総合通信局の電波監視体制が進み、ラジオ放送以外での電波ジャックは理論上困難となりつつある。

有線通信

有線放送は、放送局から電線を通じて各家庭への配信を行う構造である。この配信網の中継点に、意図的に発信配線をまぎれ込ませることによって、そこから下流の受像器に電波ジャックを行う。ケーブルテレビに例を取れば、無線送受信の放送に比べて音声・映像双方の完全な乗っ取りが容易である。

無線での事例

テレビ

革共同と関連した電波ジャック

革命的共産主義者同盟革マル派中核派ゲバルトが激化していた時代に、革マル派の主張に準ずる内容の電波ジャックが行われた。同団体の関与が疑われるが詳細は不明である。

1978年1月17日東京都内においてNHK総合テレビの「NHKニュース」を放送中の午後0時から午後0時15分にかけて電波ジャックされ、映像はNHKのまま音声のみの演説が放送されるという事件が発生した。放送の内容は、女性の声で水本事件(革マル派の学生が警察によって殺害されたと革マル派が主張する事件)の真相究明を訴えるものだった。新宿区渋谷区杉並区中野区練馬区など、東京都道318号環状七号線の半径5kmの範囲で発生したため、車で移動しながら放送したのではないかとみられている。同日夜に、電波ジャックは「国際人民連帯委員会」が実施したもので、革マル派は同委員会とは無関係である、という革マル派側の声明が発表された。この事件で、NHKには苦情が100件寄せられた[2]

1987年4月5日には、東京都杉並区において、NHK総合テレビの大河ドラマ独眼竜政宗』を放送中の20時20分から4分30秒間、電波ジャックが発生した。女性の声で「中核派は人殺し集団であり、東京都議会議員補欠選挙に立候補している長谷川英憲には投票するな」と演説する内容で、このときはNHKに80件の苦情があったという

「連帯」事件

1985年9月、ポーランドトルン大学(ニコラス・コペルニクス大学)に所属する天文学者であるZygmunt Turlo、Leszek Zaleski、Piotr Lukaszewski、Jan Hanaszの4人がパソコンと送信機を用いた自作の放送機材を用いてトルンの国営テレビ放送を乗っ取る事件を起こした。その内容は「値上げ、嘘、弾圧はもうたくさんだ。トルン「連帯」 (Enough price increases, lies, and repressions. Solidarity Torun)」と「選挙のボイコットはわれわれの義務である (It is our duty to election boycott)」という二つの字幕であり、独立自主管理労働組合「連帯」のロゴと共に国営放送の内容に被さるように表示されるものであった4人の学者の行動は後に当局に発見され、「無免許の無線送信機の所持と公衆の不安を煽る行為」を罪状として拘束された。しかし当局は4人の天文学会での功績を考慮(実際には西側諸国からの批判をかわす為でもあった)し、4人に対しそれぞれ100ドル相当の罰金と執行猶予付きの判決を下すに留まった。しかし、ポーランドの一般的な月収が20ドルに満たない時代であった当時としてはこの判決でも大変な重刑であり、民衆のポーランド人民共和国に対する不満は後のポーランド民主化運動によって結実していく事になる。

マックス・ヘッドルーム事件

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1987年11月22日、イリノイ州シカゴで同日中に2度にわたって発生した事件。午後9時台にWGN-TV(シカゴ9ch)のニュース番組「The Nine O'Clock News」の放送中、次いで午後11時台にWTTW(シカゴ11ch)英語版でドラマ『ドクター・フー』の放送中、マックス・ヘッドルームをモチーフにした仮面を被った男が、車庫のような空間の中で意味不明の言葉を喋りつづけ、映像の後半では尻を出して女性らしき人物にムチで叩かせる、という映像が流された。女性が登場するシーンの前後や音声等を編集してあることから生放送ではなかったとみられるが、その不気味かつ下品でどことなくユーモアのある映像は世間を驚かせ、現地のニュース番組にも取り上げられた。現在に至るまで犯人は発見されていない。

法輪功による電波ジャック

2002年、法輪功は同運動家による中国中央電視台への電波ジャックを行い、中国政権が禁止する法輪功に関する映像を放送したと発表した

レバノン侵攻の際の電波ジャック

2006年7月、イスラエルレバノン国内の非国家軍事組織ヒズボラとの間に起きた紛争であるレバノン侵攻の際、イスラエル軍はヒズボラの機関衛星放送局であるアル=マナールTVの周波数帯をジャックして、ヒズボラ及びヒズボラ議長ハサン・ナスルッラーフを批判する内容のプロパガンダ放送を流し続けた[7]。通常の電波ジャックとは性格が異なる、国家及び正規軍が戦術の一環として公然と行った大規模な電波ジャックの一例である。

有線での事例

ケーブルテレビ

キャプテン・ミッドナイト事件

1986年4月26日東部標準時12時32分、アメリカのケーブルテレビHBOの放送が乗っ取られた事件。同局で映画コードネームはファルコン』を放送中にロングアイランドの放送電波塔からの電波が乗っ取られ、カラーバーを背景に「キャプテン・ミッドナイト (Captain Midnight)」を名乗る人物からの下記のようなメッセージが、数分間にわたって表示され続けた。

GOODEVENING HBO
FROM CAPTAIN MIDNIGHT
$12.95/MONTH ?
NO WAY !
[SHOWTIME/MOVIE CHANNEL BEWARE!]

上記はHBOの競合ケーブル放送網のショウタイムThe Movie Channelの視聴を推奨する内容で、後にフロリダ州オカラ在住のジョン・R・マクドゥーガルが逮捕された。マクドゥーガルはHBOの放送内容と料金に不満を持って犯行に及んだ、と自供しており、5000ドル罰金および保護観察処分となった。

なお、犯人逮捕の決め手は電波の発信源の特定ではなく、彼の犯行を知る者からのウィスコンシン州当局への匿名での電話通報であった。逆探知により電話の発信元がフロリダ州ゲインズビル州間高速道路75号線沿いのサービスエリア公衆電話という事までは突き止められたが、通報者の詳細はついに判明しなかった。

プレイボーイ事件

1987年9月、アダルト放送を展開するプレイボーイチャンネルの電波が乗っ取られる事件が発生。犯人として逮捕されたトーマス・ヘイニーはクリスチャン・ブロードキャスティング・ネットワーク (CBN) の従業員であり、プレイボーイチャンネルのポルノグラフィに抗議する意図で犯行に及んだと語っている。この事件によりヘイニーはCBNを解雇された[8]

天安門事件映像

2014年8月1日夜、中国浙江省温州市のケーブルテレビで、1989年の天安門事件の際に男性が戦車の前に立ちはだかった映像や、投獄されている民主化活動家らの釈放を求める映像、中国共産党を批判する映像などが数十分流れた後、テレビ放映自体が遮断された[9][10]。同年8月16日、警察当局は40歳のシステムエンジニアの男の身柄を拘束した[11]

放送波以外の事例

杉並区防災無線電波ジャック事件

1985年6月22日午後9時45分頃、東京都杉並区の防災無線用スピーカーにおいて、杉並区議会議員(当時)・長谷川英憲を中傷する内容の声明が流れた。長谷川は当時東京都議会議員選挙に立候補しており、同日は選挙運動期間中であった。革マル派の犯行が疑われたが不明である。

地下鉄オウムソング事件

1995年6月26日営団地下鉄銀座駅永田町駅の構内放送からオウムソングが5~7分間流れた[12]

チェコの核攻撃映像事件

2007年6月17日、チェコプラハを中心に全土で放送している国営放送局チェコ・テレビが日曜朝に放映していた、チェルニー・ドゥール近郊のクルコノシェ山脈を撮影した情報カメラの映像において、カメラがスクロールしていく最中に突然真っ白い閃光が画面全体を覆いつくし、その後核爆発キノコ雲が立ち上る風景が映し出され、ホワイトノイズとともに映像が途切れるという、一見すればチェコを標的とした核戦争が勃発したと見間違えかねない凄まじい映像が映し出された。

犯行はチェコ国内で過去何度も電波ジャックを繰り返していたゲリラアーティスト集団Ztohovenによる回線に直接介入したものであり、実際の映像にコンピュータグラフィックスを重ね合わせて製作したCGIを、カメラと放送局をつなぐ回線に割り込ませる手口であった[13]。チェコ当局は、いたずらとしても芸術表現としてもあまりに度が過ぎた行為であることを重く見て、同グループの主要メンバーを摘発。後に実刑判決が下される騒ぎとなった。

真相不明の事例

放送局側から、電波ジャックではなく放送事故である、もしくは原因不明である、と公式発表が行われたものを列記する。

イギリス

Southern Television

イギリスでは1977年11月26日、Southern Televisionが夕方に放送するITNニュースの音声を遮る形で電波ジャックが行われた(映像に支障は発生しなかった)。その内容は「銀河系協会の代表である"ギリオン"」を名乗る人物のデマ演説であり、人類に迫る危機に警告を発し世界平和と人類の融和を説いたものであった。6分間に渡るこのデマ放送は当時のイギリスで大変な話題となり、主要新聞はその州の日曜版で一斉にこの事件を報じた程であった[14]。また、同国の超常現象専門誌Fortean Timesにはこの事件の特集が組まれ、放送された音声を書き起こした文章が掲載された。

オーストラリア

セブン・ネットワーク

2007年1月3日、セブン・ネットワークカナダのTVドラマ「メーデー!:航空機事故の真実と真相」を放送している最中に突然音声が途絶え、アメリカ人特有のアクセントで“Jesus Christ, help us all, Lord”と唱える音声が6分間に渡り繰り返し流れ続けた。セブン・ネットワークのスポークスマンは、実際には一部の語句を除いて関連性が見受けられないにも関わらず、「この音声はメーデー!作中の実際の音声である“Jesus Christ one of the Nazarenes”という部分が繰り返し流れ続けてしまった放送事故である」という声明を発表した。しかし、セブン・ネットワークの外部で独自に研究を行う研究者は、流された音声は2006年にイラク戦争で武装勢力のIEDと銃撃を受けた民間トラックの光景を報じたニュース映像の音声の一部ではないかという指摘をしている。しかし、どういった経緯でこのような音声が放送に紛れてしまったのかは現在でも明らかになっていない。

アメリカ

WJLA-TV

2007年7月13日、ワシントンD.C.ABC傘下のデジタル放送局WJLA-TVの地上デジタル放送に、突然不鮮明な男女の写真が映し出されるという事態が発生した。しかしこの事態は地上デジタル放送チャンネルにのみ行われ、アナログ放送のチャンネルには発生しなかった。当初この事態は、暗号化が行われているはずのデジタル放送に発生した本当の電波ジャックではないかと言われていたが、WJLA-TVの公式発表では「旧式のHDTVエンコーダの誤動作により、オプラ・ウィンフリー・ショーの静止映像が誤って表示されてしまった放送事故である」と発表されており、真相は現在でも明らかにはなっていない[15]

コムキャスト

2007年5月1日、ニュージャージー州リンクロフト一帯で、アメリカのケーブルテレビ事業者コムキャストが配信するディズニー・チャンネルにて「おたすけマニー」を放送中に、ハードコアポルノグラフィ映像が流されるという事件が発生した。コムキャストは視聴者からの苦情に対し、「我々はこの事件の根本的原因を今後も調査し続ける」という声明を発表した[16]。2009年2月1日にはアリゾナ州ツーソンにおいて、同じコムキャストが配信するNBC系列の在ツーソン放送局KVOAが放送していた第43回スーパーボウルアリゾナ・カージナルスピッツバーグ・スティーラーズ)の第4クォーターの最中に映像が途絶え、約30秒間に渡りポルノ映像が流されるという事件も発生した。2年前の事件の調査後にも関わらず再び似たような事件が繰り返された事で、コムキャストは対応と弁明に追われる事になった[17][18]。しかし、いずれの事件も現在まで原因の究明及び犯人の逮捕には至っていない。

でっち上げと見られる電波ジャック事件

ワイオミング・インシデント(ワイオミング事件)

「アメリカ・ワイオミング州で発生したテレビ放送の電波ジャック」とされる映像(ただし、後述のようにフェイク映像である可能性が高い)。冒頭はニュース番組の映像(カラー)で始まるが、突如砂嵐(ノイズ)が発生し、全編モノクロの怪映像が6分程度に渡って続く。内容はまず、「333-333-333 We Present A SPECIAL PRESENTATION(訳:333-333-333 特別なプレゼンテーションをお送りします)」という文字列が画面上半分と、上下反転の鏡文字として画面下半分に書かれた映像が不気味な効果音と共に数秒続き、映像が大きな文字による不可思議な主張に切り替わると、直後に男性の顔をモチーフにしたアニメーション映像が流れ、再び「333…」のローテーションが複数繰り返されるというものであった。前衛芸術的な表現方法を用いられた映像で、その映像を見た人々の大半が「気味の悪い映像」だと評価しており、インターネット上では「アメリカで起きた電波ジャック事件」として高い知名度を持つ。

しかし、その知名度に反して公開されている映像や上述した事の顛末以外の情報に乏しい(もし実際の電波ジャック事件だとしたら、5W1Hのうち何年何月何日何時何分頃に行われたのかという肝心の「when」(いつ)が欠けている)。また、2004年頃にインターネット上で動画が公開されてから初めて有名になったこと、電波ジャックにしては砂嵐のノイズが不自然(実在する電波ジャック事件の映像と比較すると分かりやすい)で、テレビ放送の映像にしては(インターネットで流れている映像の)画質が高すぎるなどの指摘も挙がっており、「映像は単なるフェイクであり、事件そのものも実在しなかった」という見解が一般的である。さらに2007年には、映像の作者と称する人物がWindowsムービーメーカーなどのソフトを用いて作ったフェイク映像であるとコメントしている[19]




杉並区防災無線電波ジャック事件
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杉並区防災無線電波ジャック事件
(すぎなみくぼうさいむせんでんぱジャックじけん)とは、1985年6月22日東京都杉並区で発生した電波ジャック事件。

事件の発端

当時、杉並区議会議員だった長谷川英憲は、中核派の支援を受けており、1985年東京都議会議員選挙に出馬していた。中核派と敵対する革マル派は、選挙期間中に長谷川の選挙ポスターを破ったり、宣伝カーを盗んで放火するなどの選挙妨害を繰り返していた。対する中核派も鉄パイプなどで武装し、選挙妨害を繰り返す革マル派との乱闘騒ぎを区内各所で起こしていた。

事件の概要

1985年6月22日午後9時45分、杉並区の小中学校など104ヶ所の公共施設の防災無線屋外拡声子局スピーカーから突然、女の声で長谷川を中傷する放送が大音量で流れ出し、放送は25分間に渡って流れ続けた[1]。あまりの大音量に、区民はあわてて外に飛び出したという。

内容は、以下の通り。

  • 「都議選に立候補している長谷川英憲はひどい男です」
  • 「こんなひどい男を都議にしてはならない」
  • 「彼らは中核派で人殺しです」
  • 「長谷川英憲は人殺しーっ」

警視庁は、革マル派の犯行とみなして捜査を進めたが、犯人逮捕されることはなくそのまま迷宮入りとなった。なお長谷川はこの都議選には落選したものの次の1989年の都議選で当選、1期を務めた[2]

犯行の手口は、防災無線と同じ周波数の発信器を乗用車に乗せ、移動しながら妨害電波を流したものとみられる[1]。当時の防災無線は音声に特定の周波数が重畳されている(トーンスケルチ)だけでスピーカーが作動する単純な仕組みだったため、伝送使用周波数とキーとなる重畳音声周波数が割り出せればジャック可能であった。

現在は放送前にデジタルコードを送信してからでないと動作しないものや、伝送自体をデジタル化するなどの方法に変更されておりジャックすることは困難である。仮に妨害電波を発射してもデューラス[3]で発信源が瞬時に割り出せるようになっており、当時のような延々とした妨害電波の発射はほぼ不可能である。



不法無線局

使用に注意が必要な機器

ここでは、電波の不法使用(不法無線局の開設)につながる可能性のある機器を取り上げる。 周波数の割当ては国によって異なるので、基本的に電波を発する製品はその国でしか使えない。 使用者に悪意がなく、電波法を犯しているという自覚がなくても、罰せられる可能性がある。


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トランシーバー
462MHz帯と467MHz帯のFRSやGMRS(メーカーはミッドランド(Midland Radio英語版)、モトローラ(Talkaboutシリーズ、 TLKRシリーズなどの海外販売品[24]))、27MHz帯市民ラジオ(違法CB)など外国規格でありながら日本国内に流通しているトランシーバーがある。
これらを使用すると、業務無線などに妨害を与える可能性がある。「米国規格(FCC rule)に適合している」などと宣伝している場合があるが、これは米国領内で有効であるという意味(技術基準適合証明機器が使用できるのは日本国内のみであるのと同様)しかない。
電波法令の技術基準に適合している証明として、玩具を除き技適マーク又は無線機器型式検定規則による検定マークがあるか確認することは最低の条件である。但し、認証の時期によってはこれらのマークがあっても使用できないものがある。
例外として、アマチュア無線の周波数帯ITU地域により一部例外はあるものの基本的に世界共通である。従って、アマチュア無線機は保証認定の規定に適合すれば免許申請が可能である(アマチュア局の開局手続きを参照)。
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ドッグマーカーは猟犬マーカーとも称し、外国製のものは144MHz帯を用いている製品が多いが、これはアマチュア業務(=アマチュア無線)の周波数である。また「周波数を上下に調整可能」と謳う物があるが、アマチュア用周波数の直下の143MHz帯、直上の146MHz帯はともに官公庁の公共業務用、放送事業者の放送事業用、その他民間の各種事業者の一般業務用として割り当てられて[26]おり、これらの業務を妨害することとなる。
日本では特定小電力無線局の一種である人・動物検知通報システム用(旧称動物検知通報システム用)に規定された142MHz帯のものを使用しなければならない。
特定小電力無線局の機器には技適マークが表示されている。

デューラス
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デューラスDEURAS)とは、不法無線局などを探知するために総務省が日本全国に配置している電波監視システム。英語: Detect Unlicensed Radio Stationsの略である。財源には電波利用料が用いられている


概要

他の無線局の運用を妨害したり、放送の受信に障害を与えたりする、不法無線局などを探知する施設・設備である。電波の電界強度、到来方向を計測、モニタし電波の適正な利用を図っている。デューラスには用途に応じて以下の種類がある。

  • 遠隔方位測定設備(DEURAS-D:DEURAS Direction finder)
  • 小型遠隔方位測定設備(DEURAS-R:DEURAS Receiver)
  • 不法無線局探索車(DEURAS-M:DEURAS Mobile)
  • 短波監視施設(DEURAS-H:DEURAS HF direction finder)