(横田基地)チーズカッター米空軍広域電子攻撃機EC-130H「コンパスコール」 飛来
2018/01/16(火)
9日から始まった南北会談。平昌オリンピック・パラリンピックという平和の祭典を平和なうちに実施するため、韓国は、北朝鮮の参加を働きかけている。同盟国・米国のトランプ大統領も「対話はいいこと」とツイート、米韓合同軍事演習の延期を決めるなど韓国に配慮。だが、交渉は一筋縄では行かない。米軍も動いた。南北会談が始まった前日、8日にグアム・アンダーセン基地に全部で20機しかないB-2Aステルス爆撃機のうち、3機も展開(写真上:アンダーセン基地に展開したB-2A)。さらに、14日には、岩国のF-35Bステルス戦闘機(写真下:艦上のF-35B)を洋上で運用できる強襲揚陸艦WASPを佐世保に配備した。B-2AもWASPも、敵を破壊する「ハードキル」の能力を見せつけて、敵の意を削ぐ「抑止」的存在。だが、先週末、横田基地に今世紀初めて飛来した米空軍EC-130Hコンパスコール広域電子攻撃機は、機体のあちこちにあるアンテナで電波の発信源を特定し、左右の主翼の下に吊り下がっている「SPEAR」という重量が500㎏を超える強力な電波妨害装置や、垂直尾翼の下に突き出し、その形状から「チーズカッター」と呼ばれるアンテナ等を使って、妨害電波をぶつけ、敵の通信はもちろん、レーダーを広範囲に妨害して、敵軍のいうなれば「目」や「耳」を奪い、「神経」も働かなくする「ソフトキル」が役目(写真下参照)。「私が断固たる強い姿勢で全ての力を投じようとしていなかったら、誰が南北対話が進むと考えただろうか」(トランプ大統領、4日) ハードキル能力の見せつけによる「抑止」から、ソフトキルによる敵軍の無害化まで、米軍は大統領の言葉を裏打ちするように「全ての力を投じる」準備をしているかのようだ。
朝鮮半島情勢と「チーズカッター」
・ 平昌五輪を巡る南北会談と米軍の動き
特殊作戦コマンドのThomas司令官が上院軍事委員会で、「特定の部隊は、海外派遣と母基地の滞在期間の比率が1対1と最悪の状態になっており、このままでは耐えられない」と、6か月派遣と6ヵ月母基地を繰り返す「一部」の部隊の多忙さを訴えていますが、EC-130Hも「一部」に当てはまると考えられ、対ISIS作戦にあわただしく活躍している様子が伺えます。
一般にEC-130Hは、敵の指揮通信を妨害かく乱したり、偽情報を流す手法で「電子戦」を担いますが、監視追尾レーダーへの妨害機能付加も検討されているようです。同機の搭乗員13名のうち、4名が操縦や航法を担当し、1名が機体整備員、他の8名で電子戦を担当し、基準では5名が語学専門員の資格を有した搭乗員で構成されます。敵の指揮通信を傍受しながら、作戦を行う様子が想像できます同機の開発は1983年に開始され、当時輸送機として大量生産されたC-130輸送機の中で、古い機体を改良してを15機のEC-130Hが生まれています
●EC-130Hが導入以降、米軍が関与した緊急事態にはほとんど投入され、コソボ、ハイチ、パナマ、リビア、イラク、セルビア、アフガニスタンで活躍してきた
●米中央軍担当エリアには2004年から継続して派遣されており、今はほとんど毎日イラク軍を支援する形で、ISISの通信妨害に当たっている
●現在この任務に派遣されている第43派遣電子戦飛行隊は、1964年と1973年に飛行を開始した年齢50歳のC-130輸送機を改造して使用しており、中東の厳しい自然の中で維持していくのは厳しい仕事だ
●また、最新の電子戦機材を老朽輸送機に組み込んで維持運用するのも骨の折れる仕事だ
●最近米空軍は、この15機のEC-130Hを、2029年までに10機の後継機EC-Xに交代させる決断をした。その計画によれば、2020年末までにEC-Xの1番機が完成することになっている
●老朽化した現在のEC-130Hを30年維持する維持経費と新型機導入経費を比較すれば、はるかにEC-X導入が効率的だと米空軍は主張している
●しかし、2011年の予算管理法が規定した予算強制削減の恐れがある中、暫定予算が今後も続けば、少なくとも2017年度時点では、EC-X導入を12か月はあと送りせざるを得ない状況にある
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