The Last War Dubbed 世界大戦争
The Last War Dubbed 世界大戦争
世界大戦争
ごく平凡な市民の目を通して、不可避的に進行していく世界戦争への恐怖を描いたSF。主人公・田村家にはささやかな幸せが訪れようとしていた。しかし東西の緊張は極限に達し、平和会議もむなしく、ついにICBMは地上を飛び立つ。人類の未来を失わせる世界戦争が始まったのだ......。
世界大戦争
東宝プロデューサーの田中友幸は、当時の世界情勢から第三次世界大戦を題材とした映画の製作を構想し、橋本忍による脚本で製作準備を行なっていた。しかし、東映でも同様の題材を扱った映画『第三次世界大戦 四十一時間の恐怖』を製作していることが判明したため、東宝側も監督に堀川弘通を立てて『第三次世界大戦 東京最後の日』の製作を急ぎ決定し、両社は競い合う形で製作を進めていった。マスコミもこの競合を報道するが、東宝側の脚本が先に完成していた東映側との類似を指摘され、東宝側は脚本の改稿を余儀なくされるも十分な解消には至らず、製作の中止を決定した。その後、内容を一新して製作が再開され、本作の完成に至った
概要
「連邦国」と「同盟国」の2大勢力間で勃発した世界最終戦争を、市井に生きる人々の姿を通して描く反戦映画である。また、製作当時は劇場公開直前に起きたベルリンの壁構築や翌年のキューバ危機に代表されるように東西冷戦の危機感が強く、それを反映した人間ドラマでもある。『私は貝になりたい』のテレビドラマ版と映画版の両方に主演したフランキー堺が、理不尽な運命に翻弄される平凡な小市民を熱演している[9]。
兵器や軍服のデザインや国章から、連邦国は資本主義陣営、同盟国は社会主義陣営を意識して描かれているが、劇中の台詞には両陣営とも英語が用いられている。準備稿の段階では、アメリカやソビエトといった実在の国名で書かれていた
従来の近未来SFでは、希望的な未来を描いていたのに対し、本作品ではそれらを否定する結末となっているのが特徴である僧侶でもある監督の松林は、本作の根底を流れるテーマとして、仏教の「無常」観を挙げている。
東宝プロデューサーの田中友幸は、1980年代のインタビューで現実の兵器類が本作品中のものに近づいていることに恐ろしさを感じていることを語っていた。
ストーリー
戦後16年が経過し、急速な復興を遂げた日本。主人公・田村茂吉は家族の幸せを願いながら、外国人記者の集まるプレスセンターの運転手として日々働いていた。そんな中、田村の長女・冴子は下宿中の青年航海士・高野と恋仲になっており、長い航海を終えて帰還した彼と久々の再会を喜ぶ。そんな2人はついに茂吉に対して結婚の決意を語り、驚く彼に反して妻のお由も賛同し、2人は結ばれることになる。
一方、世界は連邦国と同盟国の2大陣営に分かれ、両陣営はお互いに核兵器を持ってにらみ合っていた。まもなく、北大西洋で行われた同盟国陣営の軍事演習エリアへ連邦国陣営の潜水艦が侵入したことをきっかけに、両者の関係は緊迫する。田村が担当する記者・ワトキンスもその状況を危惧し始めた。日本政府も国民の間に動揺が広がりつつあることを考慮し、両国の関係改善の道を探ろうとする。だが、ワトキンスが緊迫した朝鮮半島・北緯38度線の情勢を取材に向かったその数日後、小型ながらも実戦で核兵器が使われるという事態が発生し、連邦国・同盟国陣営双方で発射装置のボタンが押されれば弾道ミサイルが発射される状況となっていた。
日本では総理が病身を押して公務を行い、両国の緊張をこれ以上高めまいと懸命の努力を行う。現場にいる軍人たちも最悪の事態だけは避けたいという思いを胸に、想定外の事故や発射装置の故障による開戦を阻止していた。やがて、南北朝鮮間で停戦協定が結ばれたことによって緊張が解け始めるが、北極海上で発生した軍用機同士の戦闘をきっかけに再び悪化し、世界各地で国同士の対立が激化してしまう。政府は核兵器の使用だけはあってはならないと訴え続けるが、日本でもついにミサイルへの警戒が始まり、人々の不安は頂点に達した。
大都市から避難しようとする人々でターミナル駅は大混乱となり、街は無人と化す。しかし、田村一家は自宅に残り、最後の
その夜、東京は核の閃光に包まれ、溶解する。翌朝、洋上の高野たちは自分たちにも残留放射能による死が訪れることを覚悟のうえで、東京へ帰ることを決意するのだった。
復興後の社会で慎ましく平和に暮らすフランキー堺(当時32歳)演じるタクシー運転手の一家が中心に描かれます。
その妻には音羽信子(当時37歳)、娘は星百合子(当時18歳)、娘の恋人に宝田昭(当時27歳)、娘の下にもまだ小さな二人の姉弟がおり、冒頭はその子たちの七五三のシーンから。
ささやかな明るい未来を夢見る主人公たちの生活と並行して、冷戦下の東西の小競り合いが見えないところで徐々に進行し、最悪の事態に向かっていきます。
本作ではあくまで主となるのは人間ドラマであり、特撮技術はそれを支える役割ですが、要所を押さえた円谷英二によるミニチュア特撮には目を見張るものがあります。
特撮によって描かれる大惨事が地震や津波などの自然災害、ましてや怪獣・異星人の襲来によるものでなく、人間同士の醜い戦争が原因であることが却って虚しさを際立たせます。
出演は上記の他にも笠智衆、白川由美、東野英治郎、山村總、上原謙、中村伸郎などベテラン揃い。序盤ではフランキー堺とジェリー伊藤が同年公開の『モスラ』と同じく揃って登場。初々しい星百合子はレギュラーとなる若大将シリーズも同年に始まります。“ニッセイのおばちゃん”こと中北千枝子がプロデューサー田中友幸の奥さんだったとは初めて知りました。
刻々と変わる世界情勢も描かれるため外人の出演者も多く、子供用の怪獣映画なら吹替のところを本作では全て字幕で通しています。
音楽は『パイプのけむり』などエッセイストとしても有名な團 伊玖磨。
監督はコメディ(『社長シリーズ』他)から戦争物(『連合艦隊』他)まで器用にこなす松林宗惠。僧侶でもある変わり種の監督で本作では無常観を表現したかったとか。
昭和世代には懐かしき昭和の風物もしっかりと描かれているのも印象的。
船上の笠智衆のセリフが切ないラストは『渚にて』に通じるところも。
タイトルがドストレートで趣も何もありませんが、今だから多くの人に観てもらいたい映画です。
The Last War English Trailer/世界大戦争 予告篇(英語版)
世界大戦争 (1961) - 日本版 予告編 (復興)
冴子は数日前に再び長い航海に出た高野へ向け、覚えたてのアマチュア無線で最後のモールス通信を行い、洋上の高野もそれに応える。「サエコ・サエコ・コウフクダッタネ」「タカノサン・アリガトウ」。
登場兵器
連邦国側
- 無人戦車
- 装軌式の車体に、12連装の戦術核搭載ミサイル発射台を装備する。また、回転式のマストがあり、V-107ヘリコプターから遠隔操作される。38度線で同盟国側の砲台を攻撃するが、同盟国側の攻撃機の反撃によって指揮ヘリコプターもろとも全滅する。
- 攻撃シーンは後に『ノストラダムスの大予言』に流用されている。
- 核ミサイル
- 連邦国側のICBMで、核弾頭を装備。運搬車のトレーラーはそのまま垂直に直立し、ミサイルの発射台として使用できるほか、C-130による空輸もできる。極東ミサイル基地に6基が配備された後、地下陣地へ格納される。
- 105戦闘機
- 連邦国側の戦闘機。
- モデルはF-101
- SA-42号
- 連邦国側の潜水艦。涙滴型の艦体上面が平滑になっている。北大西洋で行なわれた同盟国陣営の軍事演習に乱入したために追跡され、防潜網に引っかかって拿捕される。
同盟国側
- モク戦闘機
- 同盟国陣営の戦闘機。形状はMiG-21をモデルとしているが、主翼が後退翼となっている、機首のピトー管の位置が異なるなどの相違点がある。北極海上空で、連邦国陣営の105戦闘機と空対空核ミサイルを交えた空中戦を展開する。
- 同盟国攻撃型潜水艦
- 同盟国側の潜水艦。第二次世界大戦時の潜水艦と同様の艦体をしている。軍事演習に乱入した連邦国攻撃型潜水艦を、2隻で追跡する。
製作
製作経緯
東宝プロデューサーの田中友幸は、当時の世界情勢から第三次世界大戦を題材とした映画の製作を構想し、橋本忍による脚本で製作準備を行なっていた。しかし、東映でも同様の題材を扱った映画『第三次世界大戦 四十一時間の恐怖』を製作していることが判明したため、東宝側も監督に堀川弘通を立てて『第三次世界大戦 東京最後の日』の製作を急ぎ決定し、両社は競い合う形で製作を進めていった。マスコミもこの競合を報道するが、東宝側の脚本が先に完成していた東映側との類似を指摘され、東宝側は脚本の改稿を余儀なくされるも十分な解消には至らず、製作の中止を決定した[その後、内容を一新して製作が再開され、本作の完成に至った。脚本の改訂は12回におよんだ
特撮
東京、ニューヨーク、ロンドン、パリ、モスクワが核ミサイルによって破壊されるクライマックスシーンは、天地を逆にしたミニチュアの下から圧縮空気を吹き出させる方法で撮影された。このシーンでのミニチュアはウエハースで作られており、ネズミがかじるため、管理に苦労したという
このシーンの映像は完成度が高く、その後も『ノストラダムスの大予言』などの劇場用作品のほか、円谷プロ制作の特撮テレビドラマ『ウルトラセブン』の最終話「史上最大の侵略(後編)」など、さまざまな作品に流用された。また、上記のシーンを含めて劇中に登場するクレムリンのミニチュアは、『海底軍艦』などの別作品にも流用された。
東京が核爆発で溶解するシーンは、『空の大怪獣 ラドン』や『日本誕生』などと同様に、溶鉄を使用している。このシーンのミニチュアは燃えやすい炭団で作られており、撮影は千葉県の製鉄会社の敷地内で行われた。上部だけ残る国会議事堂は、ミニチュアが偶然燃え残ったものであった。
同シーンで撮影を担当した有川貞昌は、離れた場所に櫓を組んで安全帯で体を固定していたが、熱によりカメラやフィルムへの危険を感じ退避しようとするも、アングルが熱くなって触ることができずパニック状態となり、どうにか櫓から飛び降りたあとはしばらく放心状態であったという。後年のインタビューで有川は、「ノロの怖さを甘く見ていた」と述懐している。
核爆発によるキノコ雲は、水槽に落とした絵の具を逆さに撮影してい。海上の笠置丸が目撃するキノコ雲は、ホリゾントに描かれた背景である。
廃墟から上る煙には、従来の硫酸を溶かしたアンモニアではなく四塩化チタンを用いているが、特技監督の円谷英二には無断であったため、特殊効果の渡辺忠昭は普段と違う状態に気づいた円谷から叱責されたという。その後、戦闘機の噴射炎で四塩化チタンを用いた際は表現に成功し、それ以降は定番の手法となっていった
東京を襲う洪水のシーンは、『日本誕生』と同じくプールに沈めた鉄板をトラックで引っ張るという手法が用いられたが、本番では波が大きくなりすぎてしまい、スタジオが水浸しになってしまったという
黒い雨の描写では、ドブのような汚い水を降らせているが、照明が汚れるなどしたため、有川は助監督の浅井正勝に事前に相談するよう苦言を呈したという。
本作品ではミニチュアの操演技術が高く評価されている。円谷は、アメリカを訪れた際に本物を使っていると錯覚した人物から「飛行機を何機飛ばしたんだ」と質問されたという。
- ベーリング海での空中戦では、ミニチュアの動きに合わせてカメラもスクロールするなど、従来の左右に動くのみの描写ではなく、三次元的な動きが描写された。輸送機の着陸シーンや潜水艦の航行シーンなどでも、立体的な画面作りを意図している。
- 38度線での戦闘シーンでは、戦闘機の攻撃を受ける戦車がミサイルのGで後方に押し戻される動きをつけるなど、細かな描写を行っている。
- 潜水艦のミニチュア特撮は、すべて水中プールで撮影された。原潜から発射される核ミサイルも、炎を噴出するミニチュアを実際に水中から操演している。
キャスト
- 田村茂吉:フランキー堺
- 高野:宝田明
- 田村冴子(茂吉の娘):星由里子
- 田村お由(茂吉の妻):乙羽信子
- 早苗(江原の娘):白川由美
- 江原:笠智衆
- ワトキンス:ジェリー伊藤
- 笠置丸船長:東野英治郎
- 首相:山村聡
- 外相:上原謙
- 防衛庁長官:河津清三郎
- 官房長官:中村伸郎
- おはる:中北千枝子
- 司令:高田稔
- 有村:石田茂樹
- 鈴江(おはるの娘):坂部尚子
- 石橋:野村浩三
- 芋屋の爺さん:織田政雄
- 記者:佐田豊
- 東京防衛司令部将校:桐野洋雄、宇野晃司
- 笠置丸船員:吉田静司
- ヘリの乗組員:古田俊彦
- 船会社の女事務員:森今日子
- 伊本(保育園の保母):三田照子
- 厚生大臣:熊谷二良
- 文部大臣:生方壮児
- 法務大臣:土屋詩朗
- 近所の人:勝本圭一郎
- ヘリの乗組員:草川直也
- 笠置丸通信士:大前亘
- 記者:勝部義夫
- 東京防衛司令部計算員:篠原正記、岡豊
- 郵便配達員:宇畄木耕嗣
- 田村一郎:阿部浩司
- 田村春江:富永裕子
- 商事会社(三亀商事)の女事務員:清水由記
- 近所の人:一万慈鶴恵、中野トシ子
- 穂高あさみ
- 連邦軍参謀:ハワード・ラルソン
- 同盟軍司令官:エド・キーン
- 同盟軍整備将校:ベルナール・バーレ
- クリフォード・ハーリントン
- 連邦軍M中尉:ハンク・ブラウン
- ダニエル・ジョーンズ
- ベン・グリーンハウ
- マイク・スネープ
- ロイ・レサード
- 同盟軍演習機パイロット:ハンス・ホルネフ
- 連邦軍発射司令:ハロルド・コンウェイ
- 同盟軍通信員:オスマン・ユセフ
※以下ノンクレジット出演者
- 笠置丸船員:荒木保夫、伊原徳、岡部正、黒木順、渋谷英男、砂川繁視、鈴川二郎、新野悟、古谷敏
- 笠置丸操舵手:鹿島邦義
- 東京防衛司令部計算員:伊藤実、大塚秀男、門脇三郎、中西英介
- テレビの歌手:越後憲三、関田裕、二瓶正典
- 東京プレスクラブ運転手:大川時生、河辺昌義、川村郁夫、草間璋夫、小松英三郎
- 東京プレスクラブ運転手、記者:坪野鎌之
- 記者:安芸津広
- 駅員:渡辺白洋児
- 大商証券社員、東京防衛司令部将校:鈴木治夫
- 政府関係者:日方一夫
- 大蔵大臣:吉頂寺晃
- 子供を迎えに来る父親:夏木順平
- 子供を迎えに来る父親、東京防衛司令部計算員:由起卓也
- 子供を迎えに来る母親:記平佳枝、毛利幸子
- 観光案内員、記者:橘正晃
- 避難誘導する警官:中島春雄
- 三亀商事の社員、記者、国会の警備員:天見竜太郎
- 大商証券の客、駅員:松下正秀
- アナウンサー:池谷三郎
- 三亀商事の社員:光秋次郎
- ヘリの操縦士:鈴木茂夫
- 避難する男:千葉一郎
- 同盟軍偵察機乗組員:エンベル・アルテンバイ
- 同盟軍将校:ロルフ・ジェイサー
- 同盟軍技師:クンプ・クーベンス
- 連邦軍参謀:レオナルド・スタンフォード
「電磁パルス攻撃」の脅威 上空の核爆発で日本全土が機能不全に
北朝鮮が核兵器や弾道ミサイルで挑発を続けるなか、もう一つの深刻な脅威として「電磁パルス攻撃」の可能性が指摘されている。上空で核爆発を起こし、広範囲で都市機能を破壊するものだ。北朝鮮は既に攻撃能力を持つとみられるが、日本の対策はほぼ手つかずで、専門家からは懸念の声が上がる。(小野晋史)大規模停電の恐れ
電磁パルス攻撃は、高度30~400キロの上空で核爆発を起こして行う。その際に生じたガンマ線が大気を構成する窒素や酸素などの分子に衝突。分子に含まれる電子がはじき飛ばされて雷のような巨大な電流が発生するなどした結果、強力な電波の一撃である電磁パルスが地上に襲いかかる。
電磁パルスは送電線を伝ってコンピューターなどの電子機器に侵入。その電圧は5万ボルトに達するため、機器はIC(集積回路)の機能停止で損壊し、同時に大規模な停電も発生すると予測されている。核爆発に伴う熱線や衝撃波は、地上には届かない。
影響範囲は爆発の高度や規模によるが、高度100キロで広島型原爆の3分の2に相当する10キロトン(TNT火薬換算)の場合、日本全土をほぼ覆う半径約1100キロにも達する。
1962年に米国が北太平洋上空で行った高高度核実験「スターフィッシュ・プライム」では、高度400キロの宇宙空間での核爆発で電磁パルスが発生。爆心から1400キロも離れた米ハワイ・ホノルルなどで停電が引き起こされ、その威力が実証された空から襲う“津波”
現代社会は電気なしでは成り立たない。電磁パルス攻撃によって大規模な停電が発生し、公共インフラを支える電子機器が損壊すれば、都市機能はまひする。
電話やインターネットなどの通信やガス、水道の供給が停止。飛行中の航空機が操縦不能になったり、電力を絶たれた原子力発電所が制御不能に陥ったりする恐れも指摘されている。
米国の専門家チームが今世紀に入ってまとめたシナリオでは、10キロトンの核爆弾がニューヨーク付近の上空135キロで爆発した場合、被害は首都ワシントンを含む米国東部の全域に及ぶ。
損壊した機器を修理する人員や物資が大幅に不足し復旧には数年を要し、経済被害は最悪で数百兆円に達する。電磁パルスは健康に直接影響しないとされるが、食糧不足や病気などで死傷者は数百万人に上ると推定している。
元陸上自衛隊化学学校長の鬼塚隆志氏は「電磁パルス攻撃は宇宙から襲う津波のようなものだ。被害を完全に防ぐことは難しくても、備えを固めるなどして減災に取り組む必要がある」と強調する「日本は無防備」
電磁パルス攻撃は地上への核攻撃と違い、ミサイルの弾頭部分を大気圏再突入時の高熱から守る技術は必要ない。小型の核弾頭を搭載したミサイルを発射し、目標上空で起爆するだけだ。
米国防総省の内部では、北朝鮮が既に核弾頭の小型化に成功したとの見方もある。成功が事実なら、弾道ミサイルや人工衛星を搭載したロケットが上空を通過するとみせかけ、日本の真上の宇宙空間で核爆発を起こすことも可能だ。日本の領土や領海に着弾する恐れがない場合、迎撃ミサイル発射のタイミングを逃す可能性は十分にある。
電磁パルス攻撃は米国やロシア、中国も能力を保有しているとされる。核爆発以外の方法でも可能だ。米露中のほか、北朝鮮や中国の脅威にさらされる韓国や台湾でも、インフラや軍などの防護対策が進んでいる。
これに対し日本は取り組みが遅れている。電子戦に関わる研究開発を担う防衛省の電子装備研究所は、電磁パルス攻撃を受けた場合に「(自衛隊の)指揮・統制機能が無力化される恐れ」があるとして、今秋にも防護技術の動向調査を始める。
だがその内容は攻撃の脅威に関する調査や、防護技術の実現に向けた課題の明確化など基礎的な検討にとどまる。
電磁パルスが防衛装備品に与える影響に詳しい企業関係者は「日本には、電磁パルス攻撃への備えがまともに存在しない。社会全体が無防備な現状は非常に危険だ」と警鐘を鳴らす。
「核のフットボール」
【広島訪問】原爆慰霊碑前でも機密装置「核のフットボール」
来日したオバマ米大統領が帯同した軍人が、ずっと持ち歩いていた黒い革かばんがある。 オバマ氏が27日に訪れた広島の原爆死没者慰霊碑前でも、軍人の足元に置かれていた。かばんは、「核のフットボール」と呼ばれる機密装置。大統領が米軍最高司令官として核攻撃をいつでもどこでも承認できるようになっている。 「スミソニアン・マガジン」(電子版)によると、機密装置は、アルミニウムのフレームと黒い革でできており、重さは約45ポンド(約20キロ)。一般に信じられているような大きな赤いボタンはない。軍事顧問が寄り添い、大統領が持つ認証コードで身元を確認する。国防総省の軍事指揮センターと連絡が取れ、「一撃で米国の全ての敵を破壊する」「特定の都市を消失させる」といった攻撃手法を選べる。
来日したオバマ米大統領が帯同した軍人が、ずっと持ち歩いていた黒い革かばんがある。
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