コマンドソロEC-130E/J Commando Solo
アメリカ空軍特殊作戦軍団で運用される電子心理戦機で、C-130輸送機をベースにEC-121コロネット・ソロで使用されていた電子機器を搭載、軍事通信はもとより、全世界の標準的なAM、FM、HFといったラジオ放送、VHF/UHFカラーテレビ放送を飛行しながら放送・中継が可能となっている。
機体垂直尾翼や機体上面にはアンテナが設置され、敵の通信機関や情報を掌握し、対象となる聴衆へ宣伝放送を行い、軍人の投降だけでなく民間人の思想改善も促している。
EC-130Eは2001年のアフガニスタン戦争や2003年のイラク戦争開戦前に投入され、ラジオ、テレビを通じて国民にプロパガンダ放送を流し続けた。
また、2001年からはC-130Jを改造したEC-130Jコマンド・ソロIIの運用も開始された。EC-130JはEC-130Eのエンジンプロペラが4枚だったのに対し、6枚にしたことで飛行性能を従来の2倍程度向上させている
輸送機として理想的な積載能力、航続距離、低速度性能を誇るロッキード(現・ロッキード・マーチン )C-130は、その多用途性を生かして多数の派生型が作られており、空輸任務以外の分野でも優れた功績を残している。
ペンシルベニア州ハリスバーグ国際空港に本拠を置く ANG(州空軍)の 第193特殊作戦航空団
が6機を管理するEC-130E/Jは、情報作戦および心理作戦に特化した航空機であり、軍事通信はもとより、全世界の標準的なAM、FM、HF(短波)といったラジオ放送およびカラーテレビ放送を中継する任務が与えられている。本機はこの能力を生かして対象となる聴衆へ宣伝放送を行い、軍人の投降と民間人の思想改善を促している。
機体は、基本的にはC-130Eを母体に、EC-121コロネット・ソロに使用されていた電子機器を搭載、さらに航法システムの強化や自己防衛機器の装備などの改造が施され、空中受油も可能となったものである。EC-130Eヴォラント・ソロとして知られた同機は、グレナダ侵攻やパナマ侵攻で空中ラジオ局として活躍、1990年に新設された特殊作戦司令部の管轄下に置かれコマンド・ソロと改称された後も、湾岸戦争の「砂漠の盾」「砂漠の嵐」両作戦やハイチ政変で暗躍し、最近ではボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビア・モンテネグロ(旧ユーゴスラビア)、アフガニスタンの上空でもラジオ・テレビを通じて国民にプロパガンダ放送を流し続けている。
なお、EC-130JはC-130Jを母体とした新型のコマンド・ソロで、4翅プロペラのEC-130Eに対し、EC-130Jには6翅プロペラが採用されており、高出力の
アリソン
製AE2100DSターボプロップ・エンジンと相俟って飛行性能が大きく向上している。ちなみに、EC-130Eという名称を持った機体には、空中から作戦行動を統制するABCCC(空中戦場指揮管制センター)、心理作戦機のリベット・ライダー、コムフィ・レヴィ、シニア・ハンターといった派生型も存在する。余談だが、この他にもC-130の電子型としてはEC-130Hコンパス・コール通信妨害機が敵の防空網を妨害する任務に活躍しているほか、米海軍でもいくつかの改造型が就役していたことがある。
原産国:アメリカ合衆国
製造:ロッキード・マーチン
原型機初飛行:1986.
全幅:40.41m
全長:29.79m
全高:11.66m
主翼面積:162.1
空虚重量:?
最大離陸重量:69750kg
エンジン:RR製AE2100D3ターボプロップ・エンジン4基
エンジン推力:8047kW
最大速度:?
巡航速度:291kt
海面上昇率:?
実用上昇限度:8534nm
航続距離:1726nm
乗員:13名
兵装:なし
型式:EC-130E(C-130E改造機型)/EC-130J(C-130J改造機型)
生産機数:?
アフガニスタンに心理戦も仕掛ける米国(上)
アフガニスタンを空爆している米軍は、ベトナム戦争の時と同様に、1チャンネルのトランジスターラジオを投下して、国民が米国側の考えを知ることができるようにすると見られている。このラジオは、貨物輸送機から毎日投下される食糧の包みとともに配布される可能性がある。食糧自体も心理作戦の一環だ。豚肉を含まないイスラム教徒向けの食糧が、星条旗の模様と、「これは米国からの贈り物です」というメッセージとともに提供されるのだ。
アフガニスタン上空で行なわれているのは、爆弾やミサイルによる攻撃だけではない。空飛ぶ広報センターが情報による攻撃を行なっている。
ラジオやテレビ向けに米国側のメッセージを送るこれらの報道機は『C-130Eコマンド・ソロ(写真)』と呼ばれ、ベトナム戦争以来、米国のほぼすべての軍事作戦に使われてきた。今回は特に大きな役割を果たすかもしれない。アフガニスタンには、『自由ヨーロッパ放送』[自由主義陣営の紹介・宣伝用放送]のような、ニュースを米国側の視点で報道するメディアが存在しないためだ。
だが、政府内外の専門家は、コマンド・ソロをはじめとする「心理作戦」が、アフガニスタンに対してどれだけの効果を持つか疑問を呈している。というのも、アフガニスタンでは使用言語が5、6種あり、識字率が低く、テクノロジーを利用できる人が少ないばかりか、国民の関心は、誰が首都を支配するかよりも、どのように食糧を手に入れるかに集中しているためだ。
C-130Eコマンド・ソロは、全長約30メートル、重さ約77トンの航空機で、定員は11名、価格は7000万ドルだ。ペンシルベニア州ミドルタウンにある、空軍州兵[米空軍の予備軍で、空軍に協力する]の一部隊、第193特別作戦航空団所属の6機が存在する。コマンド・ソロは、既存の信号を無効にしながらAMおよびFMラジオ放送、UHFおよびVHFテレビ放送で自身の信号を送ることができ、ボスニア紛争の際にも利用された。
「米軍の任務と、なぜ米軍がここにいるかを、(アフガニスタン国民が)自国語で知るチャンスとなる」と語るのは、陸軍第4心理作戦部隊の元少佐、エド・ラウズ氏。第4心理作戦部隊は、コマンド・ソロが流布する内容を録音する部隊で、ノースカロライナ州フォートブラッグを本拠とし、1145名からなる。心理作戦を専門とするものとしては唯一の部隊だ。
「ボスニア、セルビア同様、(アフガニスタンには)米国に友好的でない人々がいる」とラウズ氏は言う。「彼らは、米国はサタンだと聞かされている。そればかりを聞かされているため、絶対的真理だと考えている。国内のラジオ局はわずか3局で、すべて政府によってコントロールされている」
「一般市民に暴動をけしかけようというわけではない」と言うのは、戦略国際間題研究所(CSIS)の軍事アナリスト、ジェイ・ファラー氏。「政府が変わることが(国民にとって)好ましい事態だと理解してもらい、それが実現したときには協力してもらうよう、種を蒔くための作戦だ」
だが、そんなメッセージが効果を発するのは、相手側がメッセージを受信するテクノロジーを持っている場合に限られる。アフガニスタンの場合、なかなかそうはいかない。
「アフガニスタンの国民のほとんどは、時事ニュースを追いかける余裕がない。日々の暮らしに精一杯なのだ」とファラー氏は言う。「大多数が、世界貿易センタービルへの攻撃のことすら知らなかったぐらいだ」
そこで米軍は、ベトナム戦争のときと同様に、1チャンネルのトランジスターラジオを投下して、アフガニスタン国民が米国側の考えを知ることができるようにすると見られている。このラジオは、『C-17』貨物輸送機から毎日投下されるおよそ3万7500個の食糧の包みとともに配布される可能性がある。食糧自体も心理作戦の一環だ。豚肉を含まない、イスラム教徒向けの食糧が、星条旗の模様と、「これは米国からの贈り物です」というメッセージとともに提供されるのだ。
アフガニスタンに心理戦も仕掛ける米国(下)
アフガニスタンを空爆している米軍は、ベトナム戦争のときと同様に、1チャンネルのトランジスターラジオを投下して、国民が米国側の考えを知ることができるようにすると見られている。このラジオは、貨物輸送機から毎日投下される食糧の包みとともに配布される可能性がある。食糧自体も心理作戦の一環だ。豚肉を含まないイスラム教徒向けの食糧が、星条旗の模様と、「これは米国からの贈り物です」というメッセージとともに提供されるのだ。
心理作戦は、さまざまな方法で、古くから行なわれている。米独立戦争の際には、英軍と米軍とで兵士の給料に不当な差があるとするビラが入植者によってばらまかれた。南北戦争では、南軍の兵に対して、家に帰って、苦しんでいる家族の面倒を見ようと呼びかけるビラが配られた。
飛行機によるプロパガンダが初めて行なわれたのは1912年。イタリア・トルコ戦争の際にトリポリタニアの住民に対して行なわれたもので、その内容は、降伏したら金貨1枚と小麦1袋が与えられるというものだった。
だが、ラウズ氏によれば、心理作戦が「本当の意味での戦術となったのは第2次世界大戦時」、ラジオの普及に伴ってのことだという。イギリスは、侵略をもくろむドイツ人たちに対し、英語のレッスンを放送した。「君たちの船は沈もうとしている」、「イギリス海峡の水は冷たい」といった例文で始まるレッスンだ。
枢軸国側は、悪名たかい『アクシス・サリー』[ナチスの謀略放送に従事]や『東京ローズ』[日本の対米謀略放送に従事]の放送で反撃した。ポピュラー音楽にのせて連合国側の気勢をそぐ言葉を放送したのだ。
ベトナム戦争時に同様の役割を果たした『ハノイ・ハンナ』は、「何が起きているかもわからないまま戦争に駆り出され、死んだり、一生障害を背負う羽目になったりするなんて……」といった言葉で、ベトナムの米兵を嘲った。
米軍側は、13世紀のベトナムの英雄陳興道(チャン・フン・ダオ)[元軍の来襲時に主将としてこれを迎え討ち、撃破した人物]などベトナムの故事を利用し、現代の空飛ぶ放送設備を使って応戦した。
湾岸戦争では、サダム・フセイン軍からの兵士たちの大量離脱に心理作戦が貢献したとされる。クウェートのファイラカ島では、米軍のヘリコプターから流されたメッセージを聞いて、駐屯していた1405名のイラク兵全員が降伏し、米国側にとって危険をともなう上陸作戦が不要になった。
だが、今回はこのような効果は期待できそうにない。
米国防総省の諮問機関である国防科学委員会は昨年、コマンド・ソロ作戦を廃止すべきだと勧告した。その理由として、放送範囲が480キロ圏内と限られていること、起伏の多い土地や植物の密生した地域では信号が簡単に妨害されてしまうことが挙げられた。
アフガニスタン国民との主要なコミュニケーション手段としては、ビラ配布というローテクな方法がとられるかもしれない。イギリスの軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』によれば、印刷物を配布するのは通常『B-52』爆撃機と『F-16』戦闘機で、10〜12万枚のビラが入った「ビラ爆弾」を投下するという。
だが、ビラに大きな効果は期待できない。アフガニスタンにおける男性の識字率はわずか27.5%、女性に至っては6%にも満たないと、ブルッキングズ研究所の外交政策研究者、フィオナ・ヒル氏は言う。字を読める人たちも、ウズベク語、タジク語、トルクメン語、パシュトゥー語、ダリー語、ファルシ語など多数の言語に分かれており、そのどれもが「われわれには話せない言語だ」、とヒル氏は語っている。
アメリカ陸軍民事活動および心理作戦司令部
アメリカ陸軍民事活動および心理作戦司令部(アメリカりくぐんみんじかつどう および しんりさくせんしれいぶ、United States Army Civil Affairs and Psychological Operations Command (Airborne) : USACAPOC(A))はアメリカ陸軍特殊作戦コマンドに所属する組織。人員は約10,000名、現在の司令部はノース・カロライナ州フォート・ブラッグ基地内にある
概要
1985年10月にアメリカ陸軍予備役特殊作戦司令部(USARSOC)内に設立された第1特殊作戦増強分遣隊(The 1 st Special Operations Command Augmentation Detachment)が前身となっている。湾岸危機の最中の1990年11月27日にUSACAPOC(A)に改編された。現役の民事部隊と心理作戦部隊を統轄する部隊であり、予備役は予備役特殊作戦司令部の管轄である構成部隊
- 第4心理作戦群 - 4th Psychological Operations Group (Airborne) : 4th POG(A)
- 第2心理作戦群(予備役) - 2nd Psychological Operations Group (Airborne) (Army Reserve) : 2nd POG(A)(AR)
- 第7心理作戦群(予備役) - 7th Psychological Operations Group (Airborne) (Army Reserve) : 7th POG(A)(AR)
- 第96民事大隊 - 96th Civil Affairs Battalion (Airborne) : 96th CA BN(A)
- 第350民事司令部(予備役) - 350th Civil Affairs Command (Airborne) (Army Reserve) : 350th CA CMD(A)(AR)
- 第351民事司令部(予備役) - 351st Civil Affairs Command (Airborne) (Army Reserve) : 351st CA CMD(A)(AR)
- 第352民事司令部(予備役) - 352nd Civil Affairs Command (Airborne) (Army Reserve) : 352nd CA CMD(A)(AR)
- 第353民事司令部(予備役) - 353rd Civil Affairs Command (Airborne) (Army Reserve) : 353rd CA CMD(A)(AR)
- 第304民事旅団(予備役) - 304th Civil Affairs Brigade (Airborne) (Army Reserve) : 304th CA Bde(A)(AR)
- 第308民事旅団(予備役) - 308th Civil Affairs Brigade (Airborne) (Army Reserve) : 308th CA Bde(A)(AR)
- 第321民事旅団(予備役) - 321st Civil Affairs Brigade (Airborne) (Army Reserve) : 321st CA Bde(A)(AR)
- 第354民事旅団(予備役) - 354th Civil Affairs Brigade (Airborne) (Army Reserve) : 354th CA Bde(A)(AR)
- 第358民事旅団(予備役) - 358th Civil Affairs Brigade (Airborne) (Army Reserve) : 358th CA Bde(A)(AR)
- 第360民事旅団(予備役) - 360th Civil Affairs Brigade (Airborne) (Army Reserve) : 360th CA Bde(A)(AR)
- 第364民事旅団(予備役) - 364th Civil Affairs Brigade (Airborne) (Army Reserve) : 364th CA Bde(A)(AR)
心理戦
心理戦(しんりせん、英: Psychological Operations, PSYOP, Psychological warfare, PSYWAR)は、対象目標となる国家、組織、個人などの意見、態度、感情、印象、行動に影響を及ぼすことを目的として、身の周りや情報に計画的な活用・応用・操作・宣伝・防止・観察・分析などの行為を施す、視野を広くすることにより、政治的目的あるいは軍事的な目標の達成に寄与することを狙った闘争の形態をいう[1]。場合によっては神経戦、宣伝戦、思想戦、情報戦、プロパガンダなどとも言う。概要
人間の持つ認識力、想像力、情報量、中立性には常に不完全性がある。また社会や国際情勢という実生活と比べて間接的な状況というものは、おおむね間接的な情報を材料にし、自らの世界観や前提、心理的な無意識などの、ある一定の虚構性に基づいて形成、強化されていく。そのために現実との齟齬が生じる可能性が常に存在するため、ここに宣撫工作、情報操作などの手段によって心理的な影響を及ぼす余地がある。[2]例えば人間は未知の出来事や理解不能な行為に直面すると、自身の経験や偏見などに基づいた印象しか喚起することができない。つまり人間の思考力はしばしばその保有する情報によって規定されることがある心理戦においては外国または自国の国民世論や政策決定者の思考、軍隊の士気など心理的な対象への心理行動(Psychological action)の実行が行われ、様々な政策や軍事作戦の遂行を助けることが出来る。心理行動は心理的媒体を使用して潜在敵国や中立国での潜在的・現実的な敵国の正当性や影響力を低下させ、また同時にこれらの国々と友好的気運と態度を助成するように企図されているものである。心理戦は周囲を観察しながら行うものでもある為、応用力と観察力も鍛えられる
分類
情報戦
心理戦は情報戦の中に位置づけることができる。情報戦において、敵の情報活動に対抗した対情報は「攻勢対情報」と「防勢対情報」の作戦行動に大別が可能であり、これに従って電子戦、軍紀、心理攻撃、情報攻撃を指す心理作戦と防諜、電子的防護を指す対心理作戦と大別できる
国家心理戦
国家心理戦は敵国・中立国・友好国・自国民・自軍を対象とする。平時・戦時を通じて心理的に働きかけることで国家政策をより有効化することを目的とし、政治的・経済的・軍事的・外交的な手段を計画的に行使することを言う
軍事心理戦
軍事心理戦とは、軍事的な活動において軍隊の作戦目標の達成に寄与するために、敵軍・敵国民の世論、感情、印象、態度などに影響を与えることを目的として、宣伝などを計画的に行うこと及び敵の同手段への対策を行うことをいう。自衛隊においては、心理戦は通常この軍事心理戦をいう。また軍事心理戦もその作戦目標から戦略心理戦と戦術心理戦に分類して考えることができる
手段
政治宣伝
心理戦における主要な手段は政治宣伝(Propaganda、プロパガンダ、広報)である。これは主に政府の情報機関、省庁の広報室、軍隊の心理作戦部隊などにより行われるものであり、戦時の国民指導、政府発表、報道検閲、出版物や各種通信への調査及び関与、映画・演劇・音楽での思想動向調査、外国語報道の指導、ポスター・ビラ・パンフレットの配布などが具体的な方法として挙げられる。その宣伝はその内容からブラックプロパガンダ(Black propaganda)、グレープロパガンダ(Grey propaganda)、ホワイトプロパガンダ(White propaganda)に分類して理解される。ブラックプロパガンダは事実以外から生じる宣伝であり、[4]ホワイトプロパガンダは当局によって普及される宣伝でありグレープロパガンダは情報源が不明な宣伝を指す。[6]これらは一方的な宣伝としてだけ用いられるのではなく、敵の宣伝内容を中和するための中和宣伝(Counteracting propaganda, Counterpropaganda)としても使用される場合もあり、その運用は多様である
軍事宣伝
戦場における宣伝活動は通常の宣伝とはその内容が異なる点が多い。これは国家心理戦における対象が世論である一方、軍事心理戦における対象は士気であるからである。軍事宣伝の形態には敵の一般的な士気や団結を低下させることを目的とした戦意作戦(MO, Morale Operations)と呼ばれる宣伝と、敵に降伏・逃亡・対上官犯罪などの利敵行為を行わせる宣伝の二種類がある。あらゆる宣伝は事実に基づいていることが必要であるが、対軍隊の宣伝は特に軍事情勢に根拠付けられた適切な情報を用いることが必要である。これは一般的に戦闘を経験することによって兵士の思考が現実主義化する傾向が認められるという見解から考えられている。故に適切な対軍隊の宣伝は、対象となる兵士の思想や心理の動向を個別に把握した上で、その兵士にとって受容しやすい宣伝を企図しなければならない。[8]ちなみに対軍隊の宣伝の内容としては、敵がより降伏しやすくするような情報、敵が徹底抗戦することの非合理性や無意味さについての主題、敵の絶望的な状況についての情報、敵が直面するであろう将来の絶望的な戦況、降伏のための具体的な行動要領の情報などが含まれていることが適切である
教育
教育は機能的に観察すれば、人間に対して一定の知識や規範、技能を付与する過程であり、心理戦においては敵性の宣伝工作に対する準備の意味を持つ。人間は発達心理学によると幼児期、児童期、青年期に渡って段階的に知的能力を発展させていくが、特に青年期の知的発達は顕著である。青年期以降の合理的思考方法は「形式的操作」と呼ばれ、抽象的・論理的思考を司る。これは特に学校教育の影響が強く影響され、ロシア心理学者ルリアによると学校教育の未経験者は実体験に基づかない命題を前提に推論することが困難であることが観察されている知的能力の欠如は高次思考力の低下による敵宣伝の効果の増進や、理解力の低下による味方宣伝の効果の減衰などが生じる可能性がある。団結を阻害し、士気を減退させるような味方にとって有害なステレオタイプを解消することや、利敵行為を防止するための精神教育なども行うことができる。
検閲
検閲とは、政府の情報機関などによって、新聞などの出版物や放送・映像・郵便などにおける表現や内容に対し、強制的に関与することである。これは敵の諜報活動を防止する防諜の意味もあるが、心理戦においては敵の宣伝を宣伝対象から隔離して防止する機能もある。国民の防衛意識の低下や反乱、利敵行為の阻止などが目的で、防衛的手段として行われる。
宣伝外交
宣伝外交(Propaganda diplomacy)は政府当局によって外国の国民世論に親善的・友好的な影響を及ぼすために行われるあらゆる対外活動である。広報外交(Public diplomacy)ともいう。文化、教育、科学、技術、芸術、スポーツ、観光、親善などの分野における活動として行われることが多い。市民による民間交流とは区別して理解される
テロリズム
テロリズム(Terrorism)は心理戦において対象に継続的に恐怖を与えることによって政治目的の達成に接近する手段である。その具体的な方法としては、破壊工作・暗殺・爆破・狙撃・放火・誘拐・虐殺・襲撃・宣伝などが挙げられる。テロリズムの対象としては、政府・国民世論・国際世論があり、その対象によって手法も応用される。テロリズムの手法は予測不能性を十分に発揮されるものが使用され、その心理的な影響力が重視される。
原則と基礎概念
心理作戦の原則には以下のようなものがある。
- 明確な目標を定義する。
- 対象への分析を基礎とする。
- 聴視者に対して適切なメディアを使用した上で心理作戦を立案する。
- 作戦目標と密接な関係をもつ結果とその価値を見極める。
- 心理作戦に抵抗する敵を最小化するように企図する。
心理作戦は、作戦目標となる対象により、必要な分析や運用するメディアが異なる。また一般状況が戦争か、戦争以外の軍事作戦かによっても異なる。
- 心理主題(Psychological theme)とは心理作戦の基本となっている理念または構想である。
- 基礎的心理作戦研究(Basic psychological operations study)とは、心理作戦に関係の深い国や地域の特性を簡潔に記述した、心理作戦の計画と実行に直ちに参考となる研究。
- 鍵象徴(Key symbol)とは心理作戦における単調で示唆的な反復的な要素を指す。
- 対象聴視者(Target audience)とは心理作戦の目的を達成するために設定される対象。
- 心理状況(Psychological situation)とは目標観衆の感情状態・精神的傾向・動機の現状である。
- 心理媒体(Psychological media)とは目標とした聴視者とのあらゆる種類の交流を確立するための技術的・非技術的な手段。
- 心理作戦アプローチ(Psychological operations approach)とは目標聴視者の一部に目標の反応を引き起こすために用いられる技術。
- 宣伝(Propaganda)とは情報・理念・教義などを直接的または間接的に対象の意見・感情・態度・行動にも影響を及ぼす訴え(プロパガンダも参照されたい)。
- 広報業務(Public affairs)は諸機関による一般国民や地域社会への広報活動。
米陸軍の心理戦活動
写真下は、アフガニスタン上空で、米軍海兵隊KC-130から輸送機搭乗員の海兵隊兵士と、
陸軍の心理戦担当兵士が協力して「心理戦ビラ」を投下しているところ。
陸軍兵士は「第303心理作戦中隊」に所属しており、投下されたビラには
「過激派の活動を鎮圧する作戦に協力しよう」とのメッセージが記載されている
湾岸戦争で 米軍が 空からまいた ビラ
米空軍のC-130心理戦部隊
次に、2010年11月号のAir Force Magazineが「新たな心理戦の方法(The New Way of Psyops)」
との記事を掲載し、非公開な部分が多いEC-130Jの活動と今後について部分的ながら紹介していますので、
理解不十分ながら紹介いたします。
EC-130J部隊の概要
●州空軍に属する第193特殊作戦航空団(193rd Special Operations Wing)は1800名の州空軍兵士と
450名の技術者から構成されており、米空軍と米特殊作戦軍の最も多忙な部隊の一つである。
●同航空団は7機のC-130を保有し、その内3機がEC-130Jで、主にテレビから短波までの放送手段を用いて、
従来「心理戦」と呼ばれていた任務を行っている。
●C-130を改造したEC-130Jは、非常に重い機体となっており、離着陸には注意を要する。また、
真空管を使用した機材から最新の機材までを混在して搭載しており、1万ワット出力のテレビ放送が可能である。
空軍の心理戦飛行部隊の経緯
●その必要性はキューバ危機の際に認識されたが、特殊な技能と継続的な人材活用と育成が念頭にあって
州空軍での運用となった。
●ベトナム戦から193航空団は活動し、83年にはグレダナ、89年にはパナマのノリエガ政権に対し、
そして湾岸戦争時はイラク兵に降参し投降するよう呼びかけた。
●94年にはハイチに戻るアリスティード将軍を支援する情報をハイチに流し、本年1月に発生した
ハイチ大地震直後にはハイチ政府からの災害情報や米国政府からのメッセージを含むVOA放送を
AmやFM周波数で14時間連続飛行ミッションで中継放送した。
EC-130Jの活動と今後の展望
●最近、任務の呼称が「心理戦(Psyops)」から「MISO(military information support operations)」
へと変更になった。背景には、国外の聴衆に対して影響を与えようとする全ての活動を含むとの概念の拡大がある。
●また前線でニーズから、電子攻撃にもEC-130Jが活用される場面も出てきた。
搭乗員によればスイッチの切り替えで比較的簡単に対応できる様だ。
●米陸軍の同様の任務部隊である第4心理作戦軍とも部隊間の交流を年2回程度図っている。
C-130J全体の任務多様化策
●193航空団の他の4機のC-130Jは、パレット入れ替えにより、複数の任務に対応できる仕様を目指している
●その仕様には、指揮統制、ISR、MISO等の複数のパレットが準備される模様。電子攻撃もその一つのなるだろう。
●国内災害対処に活動した経験はないが、ハリケーン・カトリーナの後のような状況下では
、被災者への情報伝達用に活用するオプションも今後生じるであろう。
●この分野は非公開な部分が依然多いが、最新の技術を活用したテレビやラジオ以外手段での
メッセージ伝達法についても視野においている。
【空飛ぶ放送局】テレビ・ラジオを電波ジャックする特殊飛行機の機内映像 - EC-130Jコマンド・ソロ
アメリカ空軍特殊作戦コマンド麾下の第193特殊作戦航空団(ペンシルベニア州)が運用する特殊作戦機「EC-130Jコマンド・ソロ」は、AM、FM、短波、テレビ、軍事通信帯域での情報操作や心理操作を行うのが任務で、空中からテレビ・ラジオ放送を乗っ取ってプロパガンダ放送を行うほか、必要に応じて放送・通信の妨害も行う。
PSYOPS! RARE GLIMPSE inside an EC-130J Commando Solo
as it conducts a SECRET TRAINING MISSION!
as it conducts a SECRET TRAINING MISSION!
Inside USAF’s Secretive PsyOps Plane: EC-130J Commando Solo
EC 130E Comando Solo
EC-130 COMMANDO SOLO | 193rd Special Operations Wing
| One-of-a-Kind Psychological Operations C-130
| One-of-a-Kind Psychological Operations C-130
MISO Marines broadcast important information to Afghans
PSYOP Explained – What are Psychological Operations / Military Information Support Operations?
PSYOP and MISO
Psychological Operations - Dora's Death Scenario UNITED STATES 06.19.2019
US PsyOps unit asks locals to review propaganda video
In the Know | Psychological Operations Regiment
US Psychological ops in Iraq
Army MOS 37F Psychological Operations Specialist
What is United States Army Civil Affairs & Psychological Command(Airborne)
第二次大戦投降ビラと湾岸戦争ビラ
ハノイ・ハンナ
ハノイ・ハンナ(Hanoi Hannah, 1931年 - 2016年9月30日)とは、ベトナム戦争において北ベトナムによって行われたプロパガンダ放送で
アナウンサーを勤めた女性のアメリカ軍における通称である。本名はチン・ティ・ゴ (Trịnh Thị Ngọ) 。
彼女は戦争の間1日に3回の放送を行ない、戦死したり捕虜となったアメリカ兵の名前を読み上げ、
またはベトナムへのアメリカの介入の不当性とその非人道性を訴えるアナウンスを行い、
アメリカ兵達の厭戦気分を煽ろうとした。あるいはアメリカ兵たちに故郷を思い起こさせ
ホームシックに陥れようと、アメリカの反戦ポピュラー音楽を流したりした。
例えば、彼女のアナウンスにはこのようなものがある。
(GIジョーのみんな、ご機嫌いかが?あなたたちのほとんどが、何の説明も受けないまま、このロクでもない戦争に連れて来られたんじゃないかしら。訳のわからないまま戦争に行くように命じられて、ここで命を落としたり、大怪我を負って一生を台無しにするのって、意味が無いじゃない。)
戦後、ハンナは国家栄誉賞を受賞し、エンジニアの夫と共にホーチミン市に移住したが、
彼女の長男はボートピープルとなってアメリカに亡命したという
2016年、ホーチミンで死去
東京ローズ
東京ローズ(とうきょうローズ、英語: Tokyo Rose)は、日本軍が第二次世界大戦中におこなった連合国側向けプロパガンダ放送の女性アナウンサーに、アメリカ軍将兵がつけた愛称。
プロパガンダ放送
「ゼロ・アワー」
日本政府は太平洋戦争中、「ラジオ・トウキョウ放送(現在のNHKワールド・ラジオ日本)」で、イギリス軍やアメリカ軍、オーストラリア軍をはじめとする連合国軍向けプロパガンダ放送を行っていた。捕虜から家族宛の手紙の紹介等をしていた。
1942年(昭和17年)2月に軍当局の発案で、連合国軍捕虜のラジオ放送の専門家を使う事にし、元オーストラリアABC放送のアナウンサーで、オーストラリア兵捕虜のチャールズ・カズンズ少佐、元アメリカのフリーランスアナウンサーで、アメリカ兵捕虜ウォーレス・インス大尉、レイズ中尉らを参加させた。チャールズ・カズンズ少佐は当初拒んだが、最終的に承諾した
そして始まったのが「ゼロ・アワー」で、音楽と語りを中心に、アメリカ人捕虜が連合国軍兵士に向けて呼びかけるというスタイルを基本とした。1943年(昭和18年)3月から、1945年(昭和20年)8月14日まで放送され、太平洋前線のアメリカ軍兵士らに評判となった。
英語を話す女性アナウンサーは複数存在したが(同局の女性アナウンサーは4人から20人ほどいたという証言もある)、いずれも本名が放送されることはなく、愛称もつけられていなかった。アナウンサーについては「孤児(みなしご)のアン」という名称が使用されていた[2]が、放送を聴いていたアメリカ軍兵士たちは声の主に「東京ローズ」の愛称を付けた
「東京ローズ」はアメリカ本国でも注目され、ニューヨーク・タイムズが1944年3月20日付の記事で取り上げたほか、1946年には映画『Tokyo Rose』が製作・公開されるほどであった。ダグラス・マッカーサーも回想録で「東京ローズ」に言及している
アナウンサー
「東京ローズ」に該当するのがどのアナウンサーであるかは、アメリカ軍兵士からは明確に判らないままであったため、戦争開始前に太平洋上で行方不明になり、その後「日本軍に捕らわれた」と噂された女性飛行家のアメリア・イアハートが「『東京ローズ』の1人として活動していた」とさえ噂されたことがあった。
終戦後、来日したアメリカ人記者達は東京ローズを、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の制止を振り切っても捜し回った[1]。「ラジオ・トウキョウ放送」側は、アメリカの従軍記者の取材に対し、東京ローズと名乗った女性は一人もいないと回答した
ところが、アメリカの従軍記者からの取材に対し、アイバ・戸栗・ダキノ(アイバ・戸栗・郁子)は、「東京ローズ」の一人であると唯一認めたため、アメリカに帰国後国家反逆罪に問われた。しかし、裁判で兵士が証言した「東京ローズ」の声質や放送内容が、戸栗のそれとは一致しないのが実情であった。
後に公開されたFBIのファイルに、「東京ローズ」の「候補」として複数の女性アナウンサーの顔写真があった[1]。
兵士が証言した「東京ローズ」は、放送期間と放送された内容や声質、およびその声紋などから、日本初の女性英語アナウンサーであるジェーン・須山こと須山芳江(1920年 - 1949年、バンクーバー育ち。「南京の鶯」と呼ばれた)である可能性が高い[1]。須山はアイバ・戸栗・ダキノの裁判の最中、1949年(昭和24年)7月18日横浜で映画を観た帰路、アメリカ軍兵士の飲酒運転により事故死したが、日本の警察にも在日米軍にも記録が無い
アイバ・戸栗・ダキノ
アイバ・戸栗・ダキノ(Iva Toguri D'Aquino、日系アメリカ人、日本名・旧姓:戸栗 郁子(とぐり いくこ)、1916年7月4日 - 2006年9月26日)「東京ローズ」の1人として、もっとも著名な人物である。
生い立ち
1916年7月4日に、輸入雑貨店を経営する山梨県出身の父・遵と、東京府出身の母・ふみのもと、日系アメリカ人2世としてアメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルスに生まれる。日本人の両親の元で生まれたものの、両親の教育方針により、アメリカ風のしつけと教育を受け、日本語の正式な教育を受ける機会は与えられなかった。
名誉回復
人種差別が合憲とされていた当時のアメリカにおいて、裁判の陪審員に問題があるなど、終始人種的偏見に満ちたものであったため、1970年代には日系アメリカ人市民同盟や在郷軍人たちによる支援活動が実り、有罪判決は疑問視されるようになった
1976年に、裁判の証人だった元上司2人が「証言は事実でなく、FBIに偽証を強要され、リハーサルもさせられた」などと告白した記事を、アメリカ人日本特派員記者がスクープ報道した
1977年1月19日、フォード大統領による特赦によりアメリカの国籍を回復した
その後シカゴに転居し、父が創業した輸入雑貨店「戸栗商店(J. Toguri Mercantile Co.)」で、晩年まで働いていた。当初は反逆者の汚名を着せられたアイバ・戸栗であったが、晩年の2006年1月には、「困難な時も米国籍を捨てようとしなかった“愛国的市民”」として退役軍人会に表彰され、感激の涙を流している[10]。2006年9月26日、脳卒中のため、90歳で死去。