FIM-92スティンガーはFIM-43レッドアイ携行空対空ミサイルの後継として1972年に開発が始まったもので、開発においては、どのような状況下でも使用できる全面性と、整備性の向上、敵味方識別装置(IFF)の搭載に主眼が置かれた。 主とする目標は低空を比較的低速で飛行するヘリコプター、対地攻撃機、COIN機などであるが、低空飛行中の輸送機や巡航ミサイルなどにも対応できるよう設計されている。このため、誘導方式には高性能な赤外線・紫外線シーカーが採用され、これによって撃ちっ放し能力(発射後の操作が不要な能力)を得ている
システムは、発射機本体と箱型のIFF装置、ミサイル本体から構成されている。ミサイル本体は円形の使い捨ての樹脂製コンテナーに収められており、このため発射準備は迅速かつ容易におこなうことが出来る。発射時には目視で目標を確認(レーダーなどがない場合)し、その後本体のスイッチを入れ、目標を捕捉する。発射引き金を引くと、シーカーが冷却され、ミサイル後部のブースターによりコンテナーから打ち出され、本体から9~10m離れたところでロケットモーターが点火、超音速まで加速する。
また発射後の操作は不要で、再装填はミサイルのコンテナーの交換とBCUと呼ばれるシーカー冷却用のガスとバッテリーのユニットを交換するだけで完了する。
IFF(Identification Friend or Foe)敵味方識別装置
質問に1030MHz
応答に1090MHz
Mode 1 :軍事用途、航空管制(AWACS等)において使用。返答できるパターンが64しか存在しないために、対象の識別用途には使われない。
Mode 2 :軍用用途、航空機を識別するために使用。返答パターンが4096存在する。
Mode 3/A :民間軍事共用。ATC?のコードと共通で航空管制用に用いられる。空港管制側で計器飛行中の各機に4桁のユニークIDを割り当て、「Mode C」と共に使われる。有視界飛行中は「1200」のIDを使用する。
Mode C :高度応答モード。このモードで質問されたとき、現在の高度を返答する。「Mode 3/A」とあわせて用いられる。二次元レーダー?しか持たない空港では、これが対象機の高度を知る唯一の術となる。
Mode 4 :軍事用の暗号化されたモードである。敵味方識別用にはこのモードを使う。
Mode S :現在の各モードの問題は、IFFの質問にたいして、範囲内のあらゆる航空機が応答するために、互いに妨害したり、人間が混乱する可能性があることである。「Mode S」は識別信号を指定し、個別の航空機のみから応答を引き出すことのできる質問信号である。「Mode 3/A」と互換性あり。
用途:近距離低空地対空野戦防空
開発・製造:
システム本体:ヒューズ・ミサイル・システム
ミサイル:ジェネラル・ダイナミクス / レイセオン
ミサイル全長: 1.5 m (5 ft)
ミサイル翼幅: 9.14 cm (3.6 in)
ミサイル直径: 7.0 cm (2.75 in)
ミサイル重量: 5.68 kg (12.5 lbs)
システム全体重量: 15.66 kg (34.5 lbs)(ミサイル含む)
システム全幅: 13.96 cm (5.5 in)
有効最大射程: 1~8 km (0.5~4.5 nm)
有効最大高度: 3,000 m (10,000 ft)
最高速度:超音速
最大捕捉可能距離: 15 km (10 miles)
誘導方式:パッシブ式赤外線アクティブシーカー・紫外線シーカー
必要人員:2名
信管:貫通衝撃信管
価格:38,000 USドル/1ユニット